毌丘倹

毌丘倹（かんきゅう けん）

毌丘倹（生年不詳 - 255年）は、中国三国時代の魏に仕えた武将です。字は仲恭。司隸河東郡聞喜県（現在の山西省運城市聞喜県）の出身で、父は毌丘興、弟は毌丘秀。子に毌丘甸・毌丘宗らがいます。

生涯

北方遠征

曹丕の時代に平原侯の文学となり、227年に曹叡が皇帝に即位すると尚書郎、次いで羽林監に任じられました。曹叡とは皇太子時代からの旧知の仲で、厚い信任を受けました。その後、地方に出て洛陽の典農となりますが、曹叡が農民を徴発して宮殿を造営することに反対しました。235年には荊州刺史に転任しています。

236年、幽州刺史・度遼将軍・使持節・護烏丸校尉に任じられ、遼東平定を曹叡に進言し、認められました。237年には遼遂に駐屯し、5千余りの兵を率いて遼西烏丸都督率衆王の護留や、右北平烏丸単于の寇婁敦らを降伏させました。公孫淵との戦いについては、記録によって記述が異なりますが、いずれにせよ公孫淵は魏からの自立を強め、燕王を自称するに至ります。238年、司馬懿を大将、毌丘倹を副将とする軍が派遣され、公孫淵を討伐し、毌丘倹は安邑侯に封じられ、食邑3900戸を与えられました。

正始年間には、1万の兵を率いて高句麗平定に出陣。句麗王の位宮が率いる2万の兵と梁口で戦い、勝利を収めます。敗走する位宮を追撃して句麗の都を破壊し、多数の首級と捕虜を得ました。位宮は妻子を連れて逃亡。翌年の再征伐では、位宮は買溝まで逃走し、毌丘倹の命を受けた玄菟太守の王頎が追撃し、粛慎氏の南界まで至り、石碑にその功績を刻みました。この戦いで、多数の兵を討ち、降伏させた者は8千余人に上り、論功行賞で百余人が封侯されました。

呉との戦い

248年に左将軍・仮節監豫州諸軍事・豫州刺史、のち鎮南将軍に昇進しました。

252年、司馬師が大将軍となり、諸葛誕・王昶・陳泰・胡遵と共に、四方を都督する人物としてその名が挙げられています。同年、呉の孫権が崩御すると、王昶・胡遵・毌丘倹は呉の討伐を提案し、魏は三方面から呉に侵攻します。毌丘倹は武昌へ進軍しますが、東興で諸葛誕らの軍が呉の諸葛恪に敗れ、全軍撤退を余儀なくされました。その後、諸葛誕と任地を交替し、鎮東将軍・都督揚州諸軍事に移りました。

253年、諸葛恪が合肥新城を包囲しますが、司馬師の指示に従い、これを守り抜きました。254年、合肥の戦いで捕虜となり忠節を守って死んだ兵士を称え、その功績を皇帝に上奏しています。また同年、毌丘倹と親しかった夏侯玄・李豊らが司馬師排斥のクーデターを計画しますが、事前に発覚し、夏侯玄らは処刑、皇帝曹芳が廃位されるという事件が起こりました。

毌丘倹・文欽の乱

255年正月、司馬師の罪状を弾劾し、揚州刺史の文欽と共に反乱を起こしました。淮南の将兵・官民を脅迫して寿春城を守らせ、自らは五、六万の兵を率いて出撃。項城を堅守し、文欽は遊軍となりました。呉に援軍を求め、それぞれの子を人質として送りました。司馬師は自ら大軍を率いて鎮圧に当たり、城を包囲し、戦闘を禁じました。淮南の将兵の多くは家族が北におり、士気が低下、降伏者が相次ぎました。

文欽は鄧艾軍への攻撃を試みましたが、司馬師率いる大軍に遭遇し、大敗。呉へ亡命しました。文欽の敗戦を聞いた毌丘倹も恐れて項城から逃亡しましたが、民の張属によって発見され、殺害されました。

評価

陳寿は、毌丘倹を「卓抜した才能と識見を有し」ていながら、「大きな野心を抱き、災禍を顧みることなく事変を起こした結果、一族が地に塗れる結果を招いた」と評しました。

三国志演義

小説『三国志演義』では、史実とほぼ同様の役柄で登場しますが、最期は敗走中に宴席で酔い潰された後、殺害されるという結末になっています。

一族

父の毌丘興は、賊徒討伐の功績により高陽郷侯となりました。弟の毌丘秀、孫の毌丘重は最後まで毌丘倹に付き従い呉へ逃れましたが、その後の消息は不明です。子の毌丘宗は、毌丘倹の挙兵時に人質として呉に送られましたが、呉の滅亡後、中国に帰還しました。挙兵に加わった一族は皆殺しとなりましたが、子の毌丘甸の妻は助命されています。

遺跡

1906年、輯安で『毌丘倹紀功碑』が発見され、高句麗征伐の功績を称えたものであることが判明しました。また、2005年には本籍地である山西省運城市聞喜県で、毌丘倹とその一族を祀った碑が発見されました。

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