張玄靚

張玄靚（ちょう げんせい）：前涼、動乱の時代の君主

張玄靚（350年 - 363年）は、五胡十六国時代の前涼の第8代君主です。父は第5代君主張重華。若くして君主の座に就きましたが、国内は混乱に満ち、権力闘争に翻弄され、わずか14歳で悲劇的な最期を遂げました。

生涯

君主擁立

建興38年（350年）、張重華の末子として生まれます。父の死後、兄の張耀霊が君主となりますが、叔父の張祚によって簒奪されます。建興42年（354年）には涼武侯に封じられます。

和平2年（355年）、宗族の張瓘、宋混らが張祚の誅殺と張耀霊の復位を掲げて挙兵すると、張祚は張耀霊を殺害。しかし、張祚の側近であった趙長、張璹らが宋混らに寝返り、皇太后の名を用いて張祚を廃し、張玄靚を新たな君主に擁立します。張祚は入殿してきた宋混らの軍に殺害され、趙長、張璹らもまた殺害されます。張玄靚は宋混、張琚らによって正式に君主に立てられ、持節・大都督・大将軍・護羌校尉・涼州牧・西平侯に任じられました。元号は、張祚の代より始まった和平を廃し、西晋の建興を再び用いて建興43年と号し、領内に大赦を下します。

張瓘の時代

即位当初は張瓘が実権を掌握。張瓘は張玄靚を推戴して使持節・大都督・大将軍・涼王とし、自らは衛将軍として兵1万を領しました。しかし、隴西の李儼が前涼から離れて自立し、討伐軍を送るも失敗。建興44年（356年）には前秦の脅迫により前秦に降伏し、前涼は前秦の従属国となります。

張瓘は次第に驕り高ぶり、人心は離れていきます。宋混は張瓘の専横を警戒し、誅殺を企てられますが、事前に察知。建興47年（359年）、宋混は兵を集めて張瓘を討伐し、張瓘は自殺。宋混が張瓘に代わって輔政を委ねられました。

張天錫の権力掌握

宋混は涼王の称号を廃止するよう進言。建興49年（361年）に病没し、遺言により弟の宋澄が輔政を委ねられますが、右司馬張邕によって宋澄は殺害されます。張玄靚は張邕と叔父の張天錫に輔政を委ねますが、張邕は皇太后と密通し、政治を専断。張天錫は郭増、劉粛らと共謀し、クーデターを起こして張邕を自殺に追い込みます。張玄靚は張天錫に輔政を委ねます。

12月、元号を東晋の升平に改めます。東晋より、張玄靚は大都督・隴右諸軍事・涼州刺史・護羌校尉・西平公に任じられました。張玄靚の母である郭氏は、張天錫による朝政の専断を憎み、張天錫の誅殺を企てますが、事前に露見し失敗。張玄靚は己の身を案じ、張天錫へ君主の地位を譲ろうとしますが、張天錫は拒否します。

最期

同月、劉粛らは張玄靚が幼く国家が多難であるとして、張天錫に自立を勧めます。張天錫はこれに同意し、劉粛らに兵を与えて入宮させ、張玄靚を殺害。その後、張天錫は張玄靚が急死したと宣言し、自らが即位しました。張玄靚は平陵に葬られ、沖公と諡されました。享年14、在位9年。東晋の孝武帝より敬悼公と諡されました。

怪異譚

張玄靚の治世下では、異常な自然現象が頻発したという記録が残っています。

建興45年（357年）5月：東苑の丘で地面が陥没し沢となり、火事が発生
建興45年（357年）6月：大風、雷鳴、暗闇、宮中で水害
建興47年（359年）6月：大雨、雷鳴、暗闇、平地で水深6尺、宮中で4尺に達する水害

これらの怪異譚は、当時の社会不安を反映していると考えられています。

宗室

祖父：張駿
祖母：馬氏
父：張重華
兄弟：張耀霊
伯父：張祚
叔父：張天錫

年号

建興：355年 - 361年（西晋の元号を継続使用）
升平：361年 - 363年（東晋の元号を使用）

参考文献

『晋書』巻86 列伝第56
『資治通鑑』巻100 - 巻101
『十六国春秋』巻74 前涼録5
* 『魏書』巻99

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