張瓘

張瓘（ちょう かん）：前涼を揺るがした宗族の生涯

張瓘（ちょう かん、生年不詳 - 359年）は、五胡十六国時代の前涼に生きた人物であり、その宗族の一員でした。彼は、前涼の政治において重要な役割を果たし、一時的に政権を掌握するほどの権勢を誇りました。しかし、その最後は悲劇的なものでした。

生涯

反乱と台頭

張瓘は、前涼の第4代君主張駿の時代に寧戎校尉に任じられました。彼は猜疑心が強く、苛虐な性格であったと伝えられています。344年には後趙の将軍王擢を破るなどの軍事的功績を挙げました。345年、張駿が河州を設置すると、張瓘はその刺史に任じられ、枹罕に鎮しました。以後10年にわたり河州を治め、その勢力を拡大しました。

張祚討伐

355年、第7代君主張祚は張瓘の存在を危険視し、彼の守備を交代させようとしました。さらに、密かに討伐軍を派遣しました。この動きを察知した張瓘は、先手を打って反乱を起こし、張祚討伐の兵を挙げました。彼は州郡に檄を飛ばし、張祚を廃して張耀霊を復位させようと訴えました。奇襲によって討伐軍を破り、その勢いは姑臧にまで及びました。

政権掌握

張瓘の勢いに呼応して、宋混らが姑臧に進軍し、張祚を殺害しました。その後、張瓘も姑臧に到着し、張玄靚を君主に擁立しました。張玄靚が幼かったため、張瓘は事実上君主として政権を掌握しました。彼は衛将軍として兵1万を率い、都督中外諸軍事・尚書令・涼州牧などの要職を兼ね、前涼の実権を握りました。

朝権掌握と内乱

政権を掌握した張瓘に対し、隴西の李儼が反旗を翻し、東晋の元号を用いて自立しました。張瓘は討伐軍を派遣しましたが、衛綝の反乱により失敗に終わりました。その後、田旋らが張瓘に背き、反乱を起こしましたが、これは鎮圧されました。

356年、前秦が使者を派遣し、張玄靚に臣従を求めました。張瓘は当初これを拒否しましたが、最終的には前秦に従属することを決めました。これにより、前涼は前秦の従属下に入りました。

張瓘は国内で強大な権力を振るい、賞罰を独断で行いました。そのため、人々の心は次第に離れていきました。

最期

張瓘は、宋混の存在を恐れ、彼を誅殺しようと企てました。さらに、張玄靚を廃立し、自ら王に即位しようと考えるようになりました。しかし、宋混はこれを察知し、先手を打って張瓘を討伐しました。張瓘は宋混に敗れ、妻子と共に自害しました。宋混は彼の一族を皆殺しにしました。

逸話

張瓘には、以下のような逸話が残されています。

張玄靚と共に城外に出た際、頑丈な橋が突然崩落した。
張祚が武具を着けた臣下を引き連れて現れ、「氐奴は汝の頭を斬りたがっているぞ」と告げる幻覚を見た。
東苑の丘から突然水が湧き出し、城北の沢で火事が起こったため、牛旋らを殺害して捧げた。
正月に鳥を放つと、放たれた鳥だけがすぐに死んでしまった。
鵲が広夏門に巣を作り、人が追い払おうとしても去らなかった。張瓘が殺害されたのは、まさにこの巣の場所であった。

これらの逸話は、張瓘の不安や焦燥、そして彼の没落を暗示しているかのようです。

張瓘は、前涼において大きな権力を握りましたが、その強引な手法と猜疑心の強さから、人々の心を失い、最終的には悲劇的な結末を迎えました。彼の生涯は、権力者の驕りや独善がもたらす悲劇を物語るものとして、歴史に刻まれています。

参考文献

『晋書』列伝第56
『資治通鑑』巻100
『十六国春秋』前涼録

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