張天錫

張天錫（ちょう てんしゃく）：前涼最後の君主、その生涯と治世

張天錫（ちょう てんしゃく、346年 - 406年）は、五胡十六国時代の前涼の第9代（最後）の君主。字は純嘏（じゅんか）、小名は独活（どっかつ）。

生涯

若き日

張天錫は、前涼の第4代君主張駿（ちょう しゅん）の末子として生まれた。兄の張祚（ちょう そ）が涼王を称すると、長寧侯（ちょうねいこう）に封じられた。その後、甥の張玄靚（ちょう げんせい）の輔政を任される。

朝権掌握

輔政の任において、張天錫は腹心の郭増（かくぞう）・劉粛（りゅうしゅく）らの進言を受け、専横を極めていた張邕（ちょうよう）を暗殺。これにより、朝廷の実権を掌握した。

張玄靚が幼かったため、政治は張天錫が専断するようになり、年号を東晋の定めた「升平」に改めた。張玄靚の母である郭氏が張天錫の誅殺を企てるも事前に露見し、張欽（ちょうきん）らは処刑された。その後、張玄靚は位を譲ろうとするが、張天錫は拒否。しかし間もなく張玄靚は殺害され、張天錫が主君に推戴されることとなった。

君主として

即位後、張天錫は東晋と前[[秦]]の双方に服属するという状態になった。しかし、音楽や酒色に溺れ政治を顧みず、臣下からの諫言にも耳を傾けなかった。

前[[秦]]への服属

当初、張天錫は前[[秦]]と国交を断絶するが、前[[秦]]の王猛（おうもう）の策略により、前[[秦]]への服属を余儀なくされる。苻堅（ふけん）は張天錫を涼州刺史に任じ、西平公に封じた。

東晋との連携

前[[秦]]の動向に不安を抱いた張天錫は、東晋との関係を強化。桓温（かんおん）と連携し、前[[秦]]を挟撃する計画を立てた。

豪族出身の梁景（りょうけい）・劉粛（りゅうしゅく）を重用し、養子として国政に参加させたが、この人事には不満の声も上がった。

前涼の滅亡

376年、苻堅は苟萇（こうちょう）らに13万の兵を与え、前涼を征伐。張天錫は自ら兵を率いて抵抗するも、連敗し、最終的に降伏を決意。自らを縛り上げ、棺を伴って前[[秦]]軍に降伏した。これにより前涼は滅亡した。

東晋への帰順と晩年

前[[秦]]に送られた張天錫は、帰義侯（きぎこう）に封じられ、侍中（じちゅう）・比部尚書（ひぶしょうしょ）に任じられた。淝水の戦い後、東晋に帰順し、孝武帝（こうぶてい）に厚遇された。西平公の爵位を復され、金紫光禄大夫（きんしかろくだいぶ）に任じられた。

しかし、亡国君主としての立場から、周囲からの誹謗中傷も多く、精神を病んでしまう。桓玄（かんげん）が帝位を簒奪すると、護羌校尉（ごきょうこうい）・涼州刺史に任じられたが、406年に病没。鎮西将軍（ちんせいしょうぐん）・金紫光禄大夫を追贈され、悼公（とうこう）と諡された。

人物

張天錫は文才に優れ、東晋に帰順して以降は孝武帝に重用された。しかし、国を滅ぼした君主として、周囲からの批判も絶えなかった。

逸話

庭園で宴を催し、政務を怠けていたため、臣下から諫められた。
即位後、地震や怪異な現象が相次いだ。
東晋の司馬道子（しばどうし）に西土の特産について問われ、ユーモラスな回答をした。
東晋の王珣（おうしゅん）と会見し、その才能に感服した。
前[[秦]]の苟萇が姑臧を攻略した際、張天錫が見た夢と同じ状況になった。

宗室

妻妾：左夫人焦氏（さふじんしょうし）、美人閻氏（びじんえんし）、美人薛氏（びじんせつし）
子女：張大懐（ちょうだいかい）、張大豫（ちょうだいえ）

年号

升平（しょうへい）：363年 - 376年（東晋の元号を使用）

参考文献

『晋書』巻86 列伝第56
『資治通鑑』巻102 - 巻114
『十六国春秋』巻74 前涼録5
『魏書』巻99

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