張益 (永楽進士)

張益（ちょう えき）は、明代に活躍した官僚であり、字を士謙、号を惷庵と称しました。1395年に応天府江寧県で生まれ、その生涯は激動の時代と深く結びついていました。

1415年、張益は進士の試験に合格し、その才能を認められて翰林院庶吉士に任じられました。その後、中書舎人、大理寺評事と順調にキャリアを重ね、その過程で『宣宗実録』の編纂にも携わりました。この編纂事業への貢献が認められ、完成後には翰林院修撰に抜擢されました。

張益は非常に博学であり、記憶力も抜群でした。詩文においてもその才能を発揮し、同時代の楊栄、楊士奇、楊溥といった重鎮からも高く評価されていました。1448年6月には、侍読学士に進み、その知識と見識をさらに国家のために役立てることになります。そして、1449年5月には文淵閣に宿直するようになり、国政の機密にも参与するようになりました。

しかし、その翌月、明の歴史を大きく揺るがす事件が起こります。オイラトのエセン・ハーンが明に侵攻を開始したのです。時の皇帝、英宗は宦官の王振にそそのかされ、親征を決定しました。張益は曹鼐と共に閣臣としてこの親征に扈従することになりました。ところが、1449年8月、土木の変が発生し、張益はこの戦乱の中で命を落としてしまいました。享年55歳でした。

張益の死後、その功績を称え、景泰帝は彼に翰林院学士の位を追贈しました。さらに、諡として文僖が贈られました。これは、彼の学問と功績に対する高い評価を示すものでした。

張益は、学識豊かで国政にも深く関与した官僚として、また、激動の時代に殉じた人物として、その名を歴史に刻んでいます。彼の生涯は、明代の歴史を語る上で欠かせない重要な一節であり、その名は今日に至るまで語り継がれています。彼が残した足跡は、官僚としての模範を示すとともに、激動の時代を生き抜いた人々の勇気と悲劇を今に伝えていると言えるでしょう。

彼の人物像を知る上で、参考文献として『明史』巻167 列伝第55や、倪岳の『青渓漫稿』巻22に収録されている「大明故翰林院侍読学士贈学士謚文僖張公合葬墓誌銘」が挙げられます。これらの文献は、彼の生涯や人となりをより深く理解する上で貴重な資料となっています。

張益の生涯は、明代の官僚制度や政治状況、そして土木の変という歴史的な事件を理解する上で、重要な視点を提供しています。彼の死は、一人の官僚の死に留まらず、明王朝の転換期における大きな悲劇として、歴史に深く刻まれています。

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