張紘

張紘（ちょうこう）

張紘（ちょう こう、字は子綱）は、後漢末期の徐州広陵郡射陽県出身の政治家であり学者です。孫策、孫権の二代に仕え、呉の発展に大きく貢献しました。

生涯

若い頃に都で学問を修め、故郷に戻った後、孝廉、茂才に推挙されましたが、中央の役所からの招聘には応じませんでした。戦乱を避けて江東に移住し、孫策が挙兵すると仕官しました。孫策からは正議校尉に任命され、丹陽討伐にも従軍しています。その際、孫策が自ら前線に立とうとしたのを諫めたという逸話が残っています。

張昭や秦松、陳端らと共に孫策の参謀として活躍し、張昭と張紘のどちらかが随行する際は、必ずもう一人が留守を守るという体制が敷かれました。呂布が徐州牧となると、張紘を茂才に推挙して呼び寄せようとしましたが、孫策が引き留めたため、呂布に断りの手紙を送っています。

建安4年（199年）には、孫策の命で許都へ使者として赴き、曹操から侍御史の位を与えられましたが、孫策の死後、曹操が攻め込もうとした際には、「他人の喪に付け込むべきではない」と主張し、曹操に出兵を止めさせました。その後、曹操は孫権に討虜将軍の地位と会稽太守の職を与え、張紘を使者として孫権の元へ送りました。孫権は帰還した張紘を会稽東部都尉に任じ、厚く信頼し「東部」と尊称しました。

張昭と共に計略や外交の任務に当たり、孫権の母である呉夫人からも孫権のことを託されるほど信頼されていました。孫権の日常的な振る舞いについても諫言を行い、その行状を改めさせたという逸話も残っています。

文章作成能力に長けており、文書の起草や史書の記録に携わりました。詩や賦といった文学作品も多く残し、陳琳からも賞賛されています。

かつての恩人であった太守の趙昱が笮融に殺害された際には、趙昱の故郷である琅邪国の相の臧覇に依頼して、趙家の縁戚の子に祭祀を継がせるよう取り計らいました。

孫権が江夏に遠征した際には、都の留守を任され、孔融からその功績を称える手紙を受け取っています。孫権が留守役としての功績を称え褒賞を与えようとしましたが、張紘は固辞しました。

孫権が合肥に出兵した際には、長史として従軍し、孫権が軽装騎兵のみを率いて前線に立とうとしたのを戒めました。合肥から帰還した翌年にも出兵しようとした際にも、再び諫言を行っています。

孫権に呉郡から秣陵（後の建業）への遷都を進言し、建安16年（211年）に遷都が実施されました。張紘は孫権の家族を呉郡へ迎えに行く任務を与えられましたが、呉郡へ向かう途中で病に倒れ、60歳で亡くなりました。死の直前、子の張靖に孫権への遺書を託し、その手紙を読んだ孫権は涙を流したと伝えられています。

張紘は内政、外交両面で優れた才能を発揮し、孫権からの信頼も厚く、呉の発展に大きく貢献した人物として評価されています。

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