当麻山背

当麻山背（たいま の やましろ）

当麻山背は奈良時代に活躍した女性で、舎人親王の妃であり、淳仁天皇の生母です。彼女の人生は、奈良時代の政治的混乱と権力の変遷を象徴するエピソードに満ちています。

経歴

山背の父は上総守従五位上の当麻老であり、彼女自身は758年（天平宝字2年）に淳仁天皇が即位する際に正三位を授与され、大夫人と尊称されました。これは彼女が皇族に属する重要な地位にあったことを示しています。

しかし、764年に発生した藤原仲麻呂の乱によって、政治情勢は一変します。淳仁天皇は皇位を剥奪され、さらに上皇号を与えられることもなく「淡路国の公」として流刑になりました。この苦境において、山背は廃帝に従い共に逃避行を選びます。

この時、二人は小子部門に逃げ込み、偶然にも道路に置かれていた鞍つきの馬を捕らえ、乗り込むことができました。逃避行を支えたのは右兵衛督の藤原蔵下麻呂であり、彼は淡路公たちの配流先まで彼らを守り導く役割を果たしました。しかし、逃避行は成功せず、二人は結局幽閉されることになります。

その後の山背の消息については詳細が記録されておらず、765年（天平神護元年）に記された『続日本紀』の中でも、淡路公の逃亡失敗のエピソードに登場する際には山背の存在が確認できないため、彼女はすでに亡くなっていた可能性もあります。

墓所の変遷

光仁天皇の治世の中で、778年（宝亀9年）に山背と淳仁天皇の墓が「御墓」として称され、淡路公の墓も「山陵」と改名されました。また、この墓を守るために近隣に住む百姓一戸が墓守として任命されたそうです。

このように、当麻山背は奈良時代の歴史の一部として、政治的な権力の変遷を乗り越えた女性の姿を象徴する存在となっています。彼女の生涯は、多くの歴史的事件に巻き込まれ、最終的には歴史の狭間に消えた女性の運命を示しています。彼女の名は、今でも日本史の中に刻まれていますが、その実像は非常に謎めいており、興味深い存在であることは間違いありません。

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