形 (囲碁)

囲碁における「形」とは

囲碁における「形」とは、部分的に定まった石の打ち方のことを指します。単に石の配置だけでなく、その後の展開や効率性、安全性も考慮された、戦略的な概念です。良い形は「好形」、悪い形は「悪形」や「愚形」と呼ばれ、対局の優劣を大きく左右します。

形の種類

好形

「好形」とは、石の働きが重複せず、効率の良い形のことです。具体的には、眼が作りやすい、相手に反撃の余地を与えない、自軍の石を強化するなどの特徴があります。例えば、星に三々入りした場合、断点を防ぎつつ眼形を確保するカケツギは好形の一例です。好形を意識することで、安定した陣地を築き、優位に立ち回ることができます。


[図] 星に三々入りした場合の定石。aとbの2つの断点が生じているが、ここでは黒1とカケツぐのが好形。2つのキリを同時に防いでおり、万一包囲されても眼形が豊富なので負ける確率が少ない。aやbに堅くツぐのは、眼形が少なく、働きに乏しい。

愚形

「愚形」とは、石の働きが重複して効率が悪い形のことで、悪形とも呼ばれます。石が不必要に固まっている状態や、眼形が作りにくい状態などが該当します。代表的な愚形としては、「空き三角」や「陣笠」があります。

空き三角

「空き三角」とは、ダメが空いた三角形の形のことです。隣接する石が互いの働きを打ち消し合い、非効率な形となります。ただし、状況によっては、あえて空き三角を作り、相手の狙いを誘う戦術的な使い方も存在します。


[図] 上左図が「空き三角」と呼ばれる典型的な愚形。aの点のダメが空いた三角形なのでこの名がある。本来2つ並んだ石からは、上右図の▲のようにトンでも切断されることはないにも拘わらず、左図のように隣接させて打っているのは、石の働きがだぶっていると考えられるが、グズミのように、自らわざとアキ三角を作りに行き、狙いを作る手もある。なおaの点に白石がある場合には「空き三角」とは呼ばず、愚形でもない。

陣笠

「陣笠」とは、空き三角にさらに石がくっついたような形のことで、さらに効率が悪い形とされます。眼形も乏しく、相手に攻撃目標を与えるだけになりがちです。


[図] 白5までの姿は、その形から「陣笠」と呼ばれる。空き三角にさらに石がくっついた愚形。眼形も乏しく、黒に攻撃目標を与えるだけとなる。白5ではaとコウで戦うなどが普通。

凝り形

「凝り形」とは、石が密集してその効果が重複し、効率が悪くなっている状態を指します。本来であればもっと広く展開できる石が、狭い範囲に密集している状態を言います。例えば、二間に開くべきところを一間に開いてしまうなどが凝り形にあたります。


[図] 白1と二間にヒラくと、黒2とコスミツケられ、白3となる。この場合、白の2つ並んだ石からは本来aくらいまでヒラきたいところであるにも拘わらず（二立三析）、狭く開いてしまっていることになる。これは効率が悪く、「凝り形」ということになる。

裂かれ形

「裂かれ形」とは、自ら石の連絡を断ち切ってしまうような、悪形の代表的な形です。自分の石を相手の強い石に近づけてしまい、結果として自分の石を弱体化させてしまいます。


[図] 図の形から、例えば隅を守ることだけを考えて黒1・3とツケヒくのは、白4とツガれて黒▲との連絡を自ら断ち切ってしまう。▲は白の強い石に張り付いた形で、自軍の石を自ら弱体化させたことになる。このように、自ら分断されに行くような手を「裂かれ形」と称し、悪形の代表とされる。

形の重要性

囲碁において「形」を意識することは、非常に重要です。良い形を築くことで、効率的に陣地を広げ、相手の攻撃を防ぐことができます。逆に、悪い形を作ってしまうと、相手に有利な展開を許してしまう可能性があります。しかし、必ずしも形に固執する必要はありません。「愚形の妙手」と呼ばれる、一見悪い形に見えるが、状況に応じて有効な打ち方も存在します。

まとめ

囲碁の「形」は、石の配置や打ち方の基本であり、戦略的な思考の基礎となる概念です。好形を身につけ、愚形を避けることは、囲碁上達への重要なステップとなります。しかし、状況に応じて柔軟な発想を持つことも大切です。基本を理解した上で、様々な打ち方を試し、自分自身の「形」を見つけていくことが、囲碁の楽しさを深める鍵となるでしょう。

参考資料

三村智保『石の形 集中講義―楽に身につくプロの感覚 (MYCOM囲碁ブックス)』2006年

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