彩 (鉄道車両)

鉄道車両「彩（いろどり）」の軌跡

「彩（いろどり）」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が2007年から2017年にかけて運用した特別な鉄道車両、いわゆるジョイフルトレインの一種です。主に団体臨時列車として、多くの利用者に快適な旅を提供しました。

誕生の背景

JR東日本長野支社では、1995年から14系客車を改造したジョイフルトレイン「浪漫」を所有していましたが、その老朽化と、機関車が牽引する必要がある運用効率の課題から、後継車両が求められることとなりました。これに応える形で、国鉄時代からの特急形電車である485系を改造し、新たなジョイフルトレインとして誕生したのが「彩」です。

車両の選択と改造

種車には、当時新潟車両センターに所属し、快速「くびき野」などで使用されていた485系T21編成の一部が選ばれました。具体的には、6両編成として使用するため、T21編成から制御車1両を除いたモハユニットや制御車が活用されました。余剰となった車両は廃車されています。

改造工事は、2006年5月から12月にかけて長野総合車両センターで行われました。JR東日本がそれまで手掛けた485系改造ジョイフルトレインの中には、台枠や機器類を流用して車体を新造した例もありましたが、「彩」の場合は既存の車体をそのまま利用し、主に内装のリニューアルに重点が置かれました。

当初、車両番号は等級変更に伴い「クロ」や「モロ」とされましたが、2015年7月1日には交直流切り替え機能の使用が停止され、直流専用となったことに伴い、既存の番号に4000番台が加算される変更が行われています。

外観と機能の刷新

外観は、白を基調とし、裾部にはベージュ、そして車体上部には号車ごとに異なるイメージカラーが配されたカラフルなデザインとなりました。客室窓の部分には、485系3000番台で見られるような連続窓風の塗装が施され、モダンな印象を与えています。客用扉には専用のロゴマークが入れられました。

機能面でも重要な改造が施されています。中間電動車のモロ484形では不要なパンタグラフが撤去され、残ったパンタグラフは中央本線の狭小トンネル区間への乗り入れを考慮し、485系としては初めてシングルアーム式のPS32形に交換されました。制御車のクロ481形は前面形状が大きく変更され、運転室窓枠は黒色化されて側面窓と同様の連続窓風の外観になりました。この改造は、後に他の485系や189系にも同様の例が見られます。

愛称表示機も従来の幕式から液晶ディスプレイに変更され、腰部にあった前照灯・後部標識灯は上部へ移設されました。一方、狭小トンネル対策として、運転室上部にあった前照灯は撤去されています。

多様な車内空間

「彩」の車内は、6両それぞれに工夫が凝らされ、多彩な過ごし方に対応できる空間となっていました。

1号車・6号車 (クロ481形)：展望を楽しめる座席車。回転リクライニングシートが並び、運転室直後には前面展望映像を映し出すモニターを備えた談話スペースや、冷蔵庫、電気ポットなどが設置されていました。
2号車・3号車・5号車 (モロ484形/モロ485形)：4人用簡易コンパートメント車。プライベートな空間で旅を楽しめるように設計されていました。トイレや洗面所も設置され、3号車にはパウダールームやマッサージチェア、5号車には車椅子対応設備も備えられていました。
* 4号車 (モロ484形)：フリースペースカー。座席定員はなく、多目的室やテーブルとソファのセット、喫煙室が設けられていました。特に、ソファ部分には液晶ディスプレイ、音響システム、カラオケ装置が搭載され、グループでの利用に適した娯楽空間となっていました。

広範囲にわたる活躍

長野総合車両センターに配属された「彩」（編成番号N201）は、2007年1月21日の団体列車で営業運転を開始しました。その運用範囲は広く、長野支社管内のみならず、団体臨時列車として北は奥羽本線青森、西は中央本線名古屋や北陸本線大聖寺まで乗り入れた実績があります。長野支社管内の団体列車や東京ディズニーリゾートへのツアー列車のほか、快速「北アルプスいろどり」や「いろどり信濃路」といった臨時快速列車、さらには他支社への貸し出しによる様々な愛称の臨時列車としても運用され、そのカラフルな姿は各地で見られました。

そして終焉

活躍を続けた「彩」でしたが、種車である485系の老朽化には逆らえず、2017年9月30日をもって営業運転を終了することになりました。最終運転日には「ありがとういろどり号」が運行され、多くのファンに惜しまれながらその役目を終えました。同年10月20日には廃車となり、その歴史に幕を下ろしました。

愛称「フリーザ電車」

「彩」は、その特徴的な前面形状や薄紫色の塗装などが、人気漫画『ドラゴンボール』に登場するキャラクターであるフリーザを連想させるとして、一部の鉄道ファンの間で「フリーザ電車」という愛称で親しまれていました。

もう一度検索