後藤道夫 (社会学者)

後藤道夫について

後藤道夫（ごとう みちお、1947年 - ）は、日本の哲学者、社会学者であり、社会哲学と現代社会論を専門としています。都留文科大学名誉教授、非営利・協同総合研究所副理事長、福祉国家構想研究会共同代表、東京学習会議東京労働学校長など、多岐にわたる分野で活動しています。

人物・経歴

福島県出身で、東京大学理学部を卒業後、1977年に一橋大学大学院社会学研究科博士課程を単位取得退学しました。大学院では岩崎允胤に師事しました。2004年には唯物論研究協会の委員長を務め、2013年3月まで都留文科大学の教授として教鞭を執りました。現在は、都留文科大学名誉教授、非営利・協同総合研究所の副理事長、福祉国家構想研究会の共同代表として、研究活動を続けています。

後藤道夫は、現代日本の貧困問題を「ワーキングプア」と「日本型雇用の崩壊」という視点から分析し、その解決策を模索しています。特に、若年層の貧困問題に焦点を当て、その原因が個人の資質ではなく、社会構造にあることを指摘しています。

主張

後藤道夫の主要な著書である『ワーキングプア原論』では、1990年代以降に顕著になったワーキングプアの大量発生の背景にある、日本型雇用の崩壊と社会保障制度の脆弱性を分析しています。また、若年層の失業を個人の能力不足とする「ニート・フリーター論」に異議を唱え、企業横断的な労働市場の整備と、それに適応した社会保障制度の必要性を提唱しています。

各種の座談会や講演会では、日本型雇用の崩壊に代表される社会構造の変化と、それに伴う高失業率、非正規雇用の増加、ワーキングプアの大量出現という現状を分析し、新たな福祉国家構想を提唱しています。1990年代までの後藤は、マルクスとエンゲルスの思想を研究し、現代社会に適合するようにマルクス主義の修正を試みていました。また、日本社会の特殊な構造を理解するための理論を考察し、帝国主義の概念を現代社会に適用し、「現代帝国主義の新たな段階」が生成していると主張しています。

著書

後藤道夫は、数多くの著書を執筆・編集しており、そのテーマは多岐にわたります。主要な著書には以下のようなものがあります。

単著

『ワーキングプア原論』 花伝社、2011年
『戦後思想ヘゲモニーの終焉と新福祉国家構想』 旬報社、2006年
『反「構造改革」』 青木書店、2002年
『収縮する日本型＜大衆社会＞』 旬報社、2001年

監修、共著、等

『資本主義を超える マルクス理論入門』 大月書店、2016年 （渡辺憲正, 平子友長, 蓑輪明子 編）
『皆保険を揺るがす「医療改革」』 新日本出版社、2013年（横山壽一 編著、日本医療総合研究所 監修）
『失業・半失業者が暮らせる制度の構築』 大月書店、2013年（布川日佐史、福祉国家構想研究会 編著）
『学生のためのライフデザイン支援講座記録集 : 平成23年度ライフデザイン支援ブックレット』 しまね女性センター、2012年（伊田広行, 中島幸子 監修・執筆、しまね女性センター 編）
『ベーシックインカムは究極の社会保障か』 堀之内出版、2012年（萱野稔人 編）
『新たな福祉国家を展望する』 旬報社、2011年（福祉国家と基本法研究会、井上英夫、渡辺治 編著）
『東京をどうするか : 福祉と環境の都市構想』岩波書店、2011年（渡辺治、進藤兵 編）
『憲法と現実政治』 本の泉社、2010年（日本科学者会議 編）
『変動期の教育費・教育財政』日本教育行政学会、2010年（日本教育行政学会 編）
『生きる意味と生活を問い直す』 青木書店、2009年（豊泉周治、佐藤和夫、高山智樹 編）
『新自由主義か新福祉国家か』 旬報社、2009年（渡辺治、二宮厚美、岡田知弘 著）
『なぜ富と貧困は広がるのか』 旬報社、2009年（木下武男 著）
『労働、社会保障政策の転換を : 反貧困への提言』 岩波書店、2009年（遠藤公嗣、河添誠、木下武男、小谷野毅、今野晴貴、田端博邦、布川日佐史, 本田由紀 著）
『「生きづらさ」の臨界』 旬報社、2008年（湯浅誠、河添誠 編、本田由紀、中西新太郎 編著）
『格差社会とたたかう』 青木書店、2007年（吉崎祥司、竹内章郎、中西新太郎、渡辺憲正 著）
『社会保障でしあわせになるために』 かもがわ出版、2007年（京都府保険医協会 編、伊藤周平、唐鎌直義、竹下義樹、久保佐世 著）
『市場化の中の「医療改革」』 新日本出版社、2005年（日野秀逸 編著、国民医療研究所 監修）
『平等主義が福祉をすくう』 青木書店、2005年（竹内章郎、中西新太郎、小池直人、吉崎祥司 著）
『岐路に立つ日本』 吉川弘文館、2004年（編著）
『現代社会と図書館の課題』 日本図書館協会、2004年（日本図書館協会図書館政策委員会 編）
『高度成長と企業社会』 吉川弘文館、2004年（渡辺治 編）
『ナショナリズムと戦争』 大月書店、2004年（山科三郎 編著）
『「新しい戦争」の時代と日本』 大月書店、2003年（渡辺治 編著）
『講座現代日本』1～4 大月書店、1997年（渡辺治 編）
『日常世界を支配するもの』 大月書店、1995年（編）
『戦後思想の再検討』 白石書店、1986年（東京唯物論研究会 編）

後藤道夫の著作は、現代社会の構造的な問題を深く掘り下げ、社会変革の必要性を訴えています。その活動は、社会科学の研究分野に留まらず、現実の社会運動にも大きな影響を与えています。

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