徐奕

徐奕（じょえき）は、後漢末期の人物であり、字（あざな）を季才（きさい）と称しました。徐州東莞郡東莞県（現在の山東省一帯）の出身です。

生涯において、彼は戦乱を避けるため江東へ渡りました。当時、勢力を拡大していた孫策から招聘を受けましたが、徐奕はこれに応じず、姓名を変えて逃亡したと伝えられています。

その後、曹操が司空（しくう）となると、徐奕は曹操に仕え、その属官となりました。馬超征伐（ばちょうせいばつ）に従軍し、戦後、現地に関中に留められ、その地域の鎮撫（ちんぶ：治安維持と住民の安定化）を任され、その手腕によって名声を博しました。

当時、曹操に寵愛されていた丁儀（ていぎ）という人物から讒言（ざんげん：嘘の告げ口）を受けたこともありましたが、徐奕は動揺することなく、普段と変わらない態度を維持しました。その結果、曹操からの信任は変わることがなく、魏郡太守（ぎぐんたいしゅ）に任用されたり、孫権征伐（そんけんせいばつ）の際の留守を任されたりと、重要な役割を担いました。

魏が藩国として創立されると、尚書（しょうしょ）、尚書令（しょうしょれい）といった要職を歴任し、人事の選任を任されるなど、国政に深く関与しました。曹操が漢中（かんちゅう）へ遠征した際、魏諷（ぎふう）という人物が反乱を起こし、楊俊（ようしゅん）が連座して免職となると、桓階（かんかい）の推薦により、徐奕が後任の中尉（ちゅうい）に任命されました。しかし、病気のため数ヶ月で辞職し、諫議大夫（かんぎたいふ）となり、その後亡くなりました。

徐奕には子がなかったため、曹丕（そうひ：後の魏の文帝）は徐奕の人柄を深く追慕し、彼の従子（いとこ）である徐統（じょとう）を取り立てたとされています。

徐奕の生涯は、戦乱の時代を生き抜き、その才能と人柄によって曹操に重用され、魏の建国に貢献した人物として評価されています。讒言にも動じない精神力や、国政に対する真摯な姿勢は、後世に語り継がれるべきものと言えるでしょう。

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