徐宗実

徐宗実（じょ そうじつ）

徐宗実（1344年 - 1405年）は、明代初期に活躍した官僚です。字は宗実、諱は垕、本貫は台州黄巌県にあります。若くして聡明で学問に励み、その才能は早くから認められていました。

生涯

徐宗実は、洪武帝の時代にその才能を認められ、推薦を受けて銅陵主簿に任じられました。しかし、孝養を理由に官を辞したいと申し出たことが洪武帝の意に逆らい、淮陰駅の戍卒に降格されるという憂き目にあいます。しかし、その才能と人柄は埋もれることなく、1388年（洪武21年）には、東川侯胡海の子である胡観が南康公主と結婚することになった際、胡観の師傅に任命されました。

この時、宮中からの使者は、他の府の例を挙げて、駙馬である胡観の席を中堂に南向きに、師である徐宗実の席を西の階段の上に東向きに置こうとしました。しかし、徐宗実は自ら胡観の席を下に置き、その後で教育を始めたと言います。この徐宗実の謙虚な姿勢に洪武帝は非常に喜び、彼を4度も召し出して慰労したと伝えられています。

洪武帝の晩年には、徐宗実は蘇州府通判に任じられました。飢饉に苦しむ民を救うため、官の穀物20万石を施すように上奏し、その実行を認められました。また、春に大洪水が発生し堤防が損傷した際には、速やかな修築を提議し、民の生活を守るために尽力しました。

徐宗実は、道徳的な人物でもありました。元の時代の節婦である王氏を顕彰するように請願しましたが、礼部は前朝の事例であるとしてこれを拒否しました。これに対し、徐宗実は「周の武王は殷の比干の墓を封じました。これは前朝の事例ではないでしょうか」と反論し、王氏の顕彰を実現させました。彼のこの行動は、過去の事例に囚われず、正しいことは正しいと主張する彼の強い信念を示しています。

1400年（建文2年）には、徐宗実は兵部右侍郎に抜擢されました。しかし、事件に連座して左遷され、間もなく復職します。靖難の変によって建文政権が危機に陥ると、徐宗実は両浙に派遣され、義勇兵を招集しました。

1402年（建文4年）に永楽帝が即位すると、徐宗実は上疏して帰休を願い出ました。しかし、1405年（永楽3年）に事件に連座して逮捕され、連行される途中で亡くなりました。享年は62歳でした。

徐宗実は、その聡明さと学識だけでなく、民を思う慈愛の心と、正義を貫く強い意志を持った人物でした。彼の生涯は、明代初期の官僚のあり方を示すだけでなく、為政者としての倫理観を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

参考文献

* 『明史』巻137 列伝第25

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