御所ヶ谷神籠石

御所ヶ谷神籠石とは

御所ヶ谷神籠石（ごしょがたにこうごいし）は、福岡県行橋市と京都郡みやこ町にまたがる御所ヶ岳（ホトギ山）に築かれた古代の山城です。この山城は、神籠石系山城に分類され、1953年に国の史跡に指定されました。発掘調査により古代山城であることが確認されましたが、『日本書紀』などの歴史書には記載がなく、築城主や正確な築城年は不明です。しかし、663年の白村江の戦いの敗戦を契機に、7世紀後半頃に築かれたと考えられています。

地理的背景

御所ヶ谷の山城は、京都平野の南側に位置する馬ヶ岳連山の一角に築かれています。京都平野は周防灘に面しており、4～7世紀にかけてこの地域は有力な首長墓が築かれるなど、早くから倭政権の影響下にありました。8世紀には国府が置かれ、九州北東部の行政中心地として栄えました。山城の北麓には大宰府と豊前国府を結ぶ官道が、南麓には豊前と筑前を結ぶ道が通り、さらに北方約7kmには古代の要港である草野津があったため、陸海交通の要衝でした。御所ヶ谷の山城は、当時の周防灘沿岸地域で最大規模の遺構です。

山城の構造

山城は、標高246.9メートルの御所ヶ岳から西に伸びる尾根沿いに、約1kmにわたって広がっています。北側の谷を頂点とする逆三角形の北斜面領域に築かれており、外周は約3kmに及びます。最も低い西門の標高は65メートルで、高低差が大きく起伏に富んだ地形です。谷部には石塁が築かれた包谷式の山城です。

土塁は全長2kmで、基底部は約7m幅、高さは約5m、壁面は70～80度で立ち上がっています。内托式の土塁で、3cm～10cmの版築土塁、花崗岩の切石列石、工事用の柱穴が検出されています。列石は全て版築土で覆われていました。

城[[門]]は、中門、東門、第二東門、第二南門、南門、第二西門、西門の7ヶ所にあります。中門と西門は谷に築かれた大規模な城[[門]]で、他は稜線に築かれた小型の城[[門]]です。特に中門は、幅6mの門道を持つ石塁で、西側の石塁は高さ7.5m、二段に築かれ、下段には排水溝を備えた水[[門]]があります。この中門の水[[門]]は、石工技術の粋を集めた神籠石の代表的な遺構とされています。

城内には、標高121メートルの尾根上に、梁行3間×桁行4間の総柱礎石建物跡があり、列石が転用されています。この建物跡は、見晴らしの良い場所に位置し、城内の各所との連絡が容易なため、城跡遺構の一部と考えられています。

また、城内の馬立場には、湿地の外側に石塁状の遺構があり、山城の貯水施設とされています。中門の西側には、長さ300メートルの未完成の土塁遺構が残っており、工事途中で計画が変更されたと考えられています。

御所ヶ谷の地名と関連施設

「御所ヶ谷」という地名は、景行天皇が熊襲征伐の際にこの地に仮の御所を設けたという伝承に由来します。城内には景行神社が鎮座しています。

2008年には、神籠石を有する自治体が集まり「第3回 神籠石サミット」が行橋市で開催されました。2010年からは、他の古代山城を有する自治体も加わり、「古代山城サミット」として発展しています。

歴史的背景

御所ヶ谷神籠石が築かれた背景には、663年の白村江の戦いで倭国（日本）が唐・新羅連合軍に大敗したことが挙げられます。戦後、倭国は国防を強化するため、各地に防衛施設を築きました。

663年：白村江の戦いで、倭（日本）・百済復興軍が唐・新羅連合軍に大敗。
664年：対馬島、壱岐島、筑紫国に防人と烽を配備、筑紫国に水城を築く。
665年：長[[門国]]に城を築き、筑紫国に大野城と基肄城を築く。
667年：大和国に高安城、讃岐国に屋嶋城、対馬国に金田城を築く。

これらの歴史的背景からも、御所ヶ谷神籠石が7世紀後半に築かれたと考えられています。

調査と研究

御所ヶ谷神籠石の考古学的調査は、1908年に伊藤尾四郎によって学会に紹介されたのが始まりです。1963年～1964年の「おつぼ山神籠石」と「石城山神籠石」の発掘調査が山城説を決定づけました。御所ヶ谷神籠石の発掘調査は1993年から開始され、調査成果は行橋市教育委員会から発行されています。

初期には、神籠石と朝鮮式山城という二つの分類で議論が行われていましたが、近年では「古代山城」として一括して研究されています。また、古代山城の築造目的も、軍事機能だけでなく地方統治の拠点としての役割も考慮されるようになりました。

現地情報

御所ヶ谷神籠石は、現在史跡自然公園「御所ヶ谷住吉池公園」として整備されており、駐車場などの施設も完備されています。遊歩道に沿って土塁や石塁を見学することができます。

アクセス

鉄道：平成筑豊鉄道田川線豊津駅からタクシーで11分。
バス：行橋駅から太陽交通バス勝山新町線に乗車し「津積」下車、徒歩26分（2100m）。
* 自動車：東九州自動車道行橋インターチェンジから約7㎞、みやこ豊津インターチェンジから約8㎞。

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