基肄城

基肄城（きいじょう / きいのき、椽城）

基肄城は、福岡県筑紫野市と佐賀県三養基郡基山町にまたがる基山（きざん）に築かれた古代山[[城]]です。その歴史は古く、7世紀後半、白村江の戦いで唐・新羅連合軍に大敗した大和朝廷が、倭（日本）の防衛のために築いたとされています。

歴史

665年（天智天皇4年）には、大野城とともに築かれたと『日本書紀』に記録されています。城の建設には、百済から亡命してきた技術者、憶礼福留（おくらいふくる）と四比福夫（しひふくぶ）が携わりました。彼らは「兵法に長けていた」と評され、その軍事技術が城の建設に活かされたと考えられます。また、大野城や基肄城だけでなく、長門国にも同様に亡命百済人によって城が築かれたと伝えられていますが、その名称や所在地は不明です。

その後、『続日本紀』には698年（文武天皇2年）に、大野城、基肄城、鞠智城の三城が修復された記事が残っており、『万葉集』にも「記夷城（きいのき）」として登場します。

立地と構造

基肄城は、大宰府の南方8キロメートルに位置する基山に築かれており、古代官道が山麓を通る交通の要衝でした。標高404メートルの基山の3つの谷を囲むように、約3.9キロメートルの城壁が築かれており、包谷式の山城としては、約60ヘクタールという広大な面積を誇ります。城壁の多くは尾根に沿って土塁で構成されていますが、谷部では石塁が使用されています。

基山の山頂からは、北に博多湾、南に久留米市や有明海、東に筑紫野市や朝倉市方面、西に背振の山並みが一望できます。この立地は、古代において、大宰府政庁や大野城、阿志岐山城、高良山神籠石といった他の軍事施設との連携を容易にし、大宰府の南の防御拠点として、特に有明海方面の有事に備える重要な役割を担っていました。

城の内部構造

発掘調査の結果、約40棟の礎石建物跡、軒丸瓦や軒平瓦、土器などの遺物、そして山頂部では溜池の遺構が確認されています。城門は、推定されるものも含めて4箇所が開いており、そのうち現存する遺構が確認されているのは、城内北寄りの「北帝（きたみかど）門」と「東北門」です。また、南寄りの「南門」と「東南門」は推定の城門です。特に、南門と一連の水門石垣は、基肄城を代表する遺構であり、その通水口は国内最大級の規模を誇ります。2015年の修理では、さらに三つの通水溝が発見され、同一の石垣面に四つ以上の排水施設を持つ古代山[[城]]は、国内では基肄城のみであることが判明しました。

周辺施設

基肄城の東南山麓には、「とうれぎ土塁」と「関屋土塁」が確認されており、基肄城と対をなす遮断城として、交通路を塞いでいたと考えられています。水城と大野城の関係と同様に、基肄城を防御する上で重要な役割を果たしていました。

防衛体制と歴史的背景

白村江の戦いの後、天智政権は唐・高句麗・新羅との交戦を避け、友好外交に徹しながら、対馬から九州北部、瀬戸内海、畿内へと繋がる防衛体制を整えました。大宰府都城の外郭は、険しい連山の地形を利用し、大野城や基肄城、水城などを連携させ、強固な防御を築きました。この防衛体制は、百済の泗沘都城を参考にしていたとされています。

近年の動向

2017年（平成29年）には、続日本100名城に選定され、その歴史的価値が再認識されました。また、1912年に関野貞によって古代山[[城]]であることが確定して以来、多くの研究者によって調査研究が進められてきました。近年では、山城の築造目的が、対外的な防衛だけでなく、地方統治の拠点としての役割も担っていたという認識が広まっています。

天智天皇欽仰之碑

1933年（昭和8年）には、基肄城を築いた天智天皇を称えるため、「天智天皇欽仰之碑」が建立されました。

イベント

2013年から2015年にかけては、「水城・大野城・基肄城 1350年記念事業」が実施され、各種の記念事業が展開されました。また、基山町のイメージキャラクター「きやまん」が漫画に登場するなど、地域振興にも貢献しています。

現地情報

基肄城跡へのアクセスは、JR九州鹿児島本線基山駅から徒歩で水門跡（南門跡）まで50分、そこから約30分で山頂に到達できます。車の場合は、久留米基山筑紫野線、宮浦ICから県道300号線を経由して、基山草スキー場方面に進むと、駐車場から徒歩10分ほどで城跡に到着します。

結論

基肄城は、古代日本の防衛戦略と土木技術を伝える貴重な遺構であり、その歴史的価値は計り知れません。現在も、多くの人々がその壮大な姿を見学に訪れています。

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