復古記

『復古記』は、明治政府によって編纂された、戊辰戦争を中心とした記録をまとめた編年体の史料集です。明治22年（1889年）に完成し、昭和4年（1929年）から昭和6年（1931年）にかけて刊行されました。全体で298巻357冊からなり、刊行本は全15冊です。

概要

『大日本史料』と同様に、編年体の「綱文」に続いて関連する史料が収録される形式を採用しています。

構成は、『復古記』150巻208冊（刊行本8冊）と『復古外記』148巻149冊（刊行本6冊）からなります。『復古記』は、慶応3年10月14日（1867年11月9日）の大政奉還から明治元年10月28日（1868年12月11日）の東征大総督解任までの期間の史料を、日付順にまとめたものです。一方、『復古外記』は、戊辰戦争における各戦闘に関する史料をまとめたもので、明治元年1月3日（1868年1月27日）の鳥羽・伏見の戦い開戦から、明治2年6月12日（1869年7月20日）の箱館戦争終結までを対象としています。

引用された書物は全1212種類に及びます。編纂のために収集された原史料は約21000点にのぼり、現在は東京大学史料編纂所に所蔵されています。

明治政府の編纂史書であり、その題名が示すように王政復古史観に基づいて編纂されています。しかし、史料の収録においては、新政府側と「朝敵」側の双方の史料を偏りなく収録している点が特徴であり、戊辰戦争研究における最も重要な基礎史料集として扱われています。

編修の沿革

明治5年（1872年）6月に『復古記』編纂の命が下り、同年10月4日には太政官正院に歴史課が設置され、長松幹を主幹として編修事業が開始されました。長松は完成まで主幹を務めました。当初の計画では、嘉永7年（1853年）のペリー来航から大政奉還までを『前記』、大政奉還から東征大総督解任までを『本記』、戊辰戦争の各戦記を『外記』とする3編構成が予定されていましたが、『前記』は編纂されませんでした。

しかし、明治6年（1873年）5月5日の宮城火災により、すでに編纂されていた『復古記』30余本と『復古外記』20余本、および収集された史料が焼失し、編纂は最初からやり直されることになりました。

明治8年（1875年）4月には歴史課が修史局に拡充され、『復古記』は第3課の担当となり、長松以下、長炗、広瀬進一、四屋恒之、中村鼎五、藤川三渓、平野知秋、沢渡広孝らが編纂にあたりました。

明治10年（1877年）1月、正院廃止により修史局は太政官修史館に改組され、『復古記』は第3局甲科の担当となりました。明治14年（1881年）12月の修史館の職制改正では、『大日本編年史』編纂に力を集中するためとして『復古記』の編纂中止が一時決定されました。これに対し、修史館監事長であった長松幹は、明治15年（1882年）1月、同館総裁の三条実美に対して事業継続を求める意見書を提出し、継続が認められました。

明治18年（1885年）に『復古記』本記が完成。明治19年（1886年）1月には修史館が廃止され、内閣臨時修史局に移管されました。その後、豊原資清が一人で『復古外記』の残りの編纂を続けました。

明治21年（1888年）10月に内閣臨時修史局が廃止され、帝国大学臨時編年史編纂掛に移管。明治22年（1889年）12月に『復古外記』が完成し、16年8か月にわたる編纂事業が終了しました。なお、検閲には重野安繹、川田剛、巌谷修、依田百川、藤野正啓、久米邦武らが携わっています。

その後、長く公刊されない状態が続きましたが、昭和4年（1929年）から昭和6年（1931年）にかけて内外書籍から全15冊で公刊されました。戦後の昭和49年（1974年）から昭和50年（1975年）には東京大学出版会から再版されています。

『復古記』の原史料は未整理のまま東京大学史料編纂所に保管されていましたが、宮地正人らによる整理が進められ、平成3年（1991年）4月に一般公開されました。この作業の際に、原史料からの引用の際、仮名遣いの変更など若干の修正が加えられていることや、採録されなかった原史料が多数にのぼることなどが判明しています。

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