徳川斉彊

徳川斉彊：激動の時代を生きた紀州藩主

徳川斉彊（とくがわ なりかつ）は、江戸時代後期に生きた大名であり、清水徳川家第5代当主、そして紀州徳川家を継いで紀伊和歌山藩の第12代藩主となりました。第11代将軍・徳川家斉の二十一男として生まれ、その血筋は12代将軍・徳川家慶、13代将軍・徳川家定へと繋がります。

生涯

斉彊の人生は、水戸藩主徳川斉脩の養子縁組の話から始まりました。しかし、これは水戸藩士の強い反対によって実現には至りませんでした。その後、文政10年（1827年）に異母兄である清水家当主・徳川斉明が死去したため、斉彊は清水家を継承することになります。

弘化3年（1846年）、斉彊にとって大きな転機が訪れます。異母兄であり、清水家の先々代当主でもあった和歌山藩主・徳川斉順が亡くなったのです。前藩主であった治宝は隠居の身でしたが、西条藩主・松平頼学を和歌山藩主に擁立しようと幕府に働きかけました。しかし、この動きは附家老の水野忠央によって阻止されます。水野忠央は、治宝への中傷を交えながらこの擁立を潰したとされています。

水野忠央が、自身の甥でもある家慶の十二男・田鶴若を藩主に据えようとしていることを懸念した和歌山藩士たちは、斉彊を斉順の養嗣子として迎え、家督を継がせるよう奔走しました。その結果、斉彊が紀州徳川家の家督を継承し、和歌山藩主となったのです。

藩主としての斉彊の治世は、決して平穏なものではありませんでした。落雷によって和歌山城の天守閣が焼失するなど、様々な困難に見舞われました。嘉永2年（1849年）3月1日（または同年3月27日）に、斉彊は30歳という若さでこの世を去ります。跡を継いだのは、養嗣子として迎えられていた斉順の子・慶福でした。

和歌山藩主としての在任期間はわずか2年10ヶ月であり、その間、江戸参府はなく、和歌山への帰国は1回、和歌山での滞在期間は合計10ヶ月でした。

年譜

文政3年（1820年）4月28日 - 誕生。幼名は恒之丞。
文政10年（1827年）
10月15日 - 江戸城内、清水館に定住し、清水徳川家の家督相続。
11月15日 - 10万石を賜る。
天保5年（1834年） - 元服。父である将軍・徳川家斉から偏諱を授かり斉彊と名乗る。従三位に叙し、左近衛権中将兼宮内卿に任官。
天保8年（1837年）8月28日 - 参議に補任。
弘化3年（1846年）
5月 - 紀伊徳川家の家督を相続し、12代和歌山藩主となる。
8月27日 - 従二位に昇叙し、権大納言に転任。
嘉永2年（1849年）3月27日 - 薨去。享年30（満28歳没）。法名は憲章院殿二品前亜相至徳道光大居士。墓所は和歌山県海南市の慶徳山長保寺。

徳川斉彊は、短い生涯の中で清水徳川家と紀州徳川家という二つの名門を背負い、激動の時代を駆け抜けました。その足跡は、和歌山の地に深く刻まれています。

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