心のともしび

『心のともしび』は、宗教法人カトリック善き牧者の会によって制作・放送されるカトリック系の布教番組です。ラジオ、テレビ、そしてインターネットと媒体を変えながら、半世紀を超える長い歴史を持っています。番組と同名の機関紙も発行されています。

番組の起源と沿革

本番組は、元メリノール宣教会会員で、カトリック東京大司教区の司祭であったアメリカ人神父、ジェームス・ハヤット氏（1922-2009）によって創始されました。1952年、カトリック京都司教区の河原町教会において設立された「カトリック善き牧者の会（Good Shepherd Movement）」の宣教活動の一環として始まりました。1954年に来日し、広報や英語教育に携わっていたパトリック・オダナヒュー神父も加わり、英語教育のためのYBUイングリッシュセンター設立と指導に関わりました。1964年には、ハヤット神父の盟友であったグレアム・マクドナル神父も「心のともしび運動」に参加するようになります。

カトリック善き牧者の会は、1995年に京都府から宗教法人としての認可を受けましたが、長らく任意団体として活動していた頃からの姿勢として、対外的には「心のともしび運動（本部）」、東北地方では「心のともしびYBU本部（YBUは『善き牧者の運動』の略称）」といった名称を使用することが多いです。

テレビ版や、姉妹番組であるラジオの『太陽のほほえみ』では、「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」という運動スローガンから始まることが特徴でした。

ラジオ版『心のともしび』

ラジオ放送は1957年、当時の京都放送（現在のKBS京都）でスタートしました。当初はハヤット神父が私財を投じ、自ら企画・出演する短時間の番組でしたが、協力者を得て放送網を次第に広げていきました。主に月曜日から土曜日の早朝に放送されていますが、その長い歴史の中で、早朝以外の時間帯に放送している系列局も存在します。そのため、番組の冒頭の挨拶は「皆様お早うございます」ではなく、「皆様ごきげんいかがですか」が用いられています。ただし、クリスマスの12月25日には「皆様クリスマスおめでとうございます」、元日や新年初回放送では「皆様明けましておめでとうございます」と特別な挨拶になります。また、一部の局では土曜日の放送を日曜日に振り替えたり、放送しない場合もあるため、エンディングの呼びかけも、金曜日および週末の放送分では「ではまたあした!」から「ではまた!」に変更されています。その年の最後の放送は、「それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ!」で締めくくられます。

かつては『太陽のほほえみ』と『心のともしび』の両方を放送していた局もあり、例えばIBC岩手放送のように、片方を早朝に、もう片方を深夜に放送するといった例もありました。

ラジオ番組の内容構成

ラジオ放送の原稿は、開始当初の1957年から7年間はハヤット神父が一人で執筆していましたが、1964年以降はカトリックの作家や教師たちの協力を得られるようになりました。この頃、神父は夜の放送を外部執筆者の原稿による『心のともしび』とし、朝には自らの話による新しい番組『太陽のほほえみ』を開始しました。

番組の朗読者については、1964年にハヤット神父が俳優座の田中千禾夫氏に相談した際、女優の河内桃子氏が紹介されました。河内氏は当初、数か月で辞めるつもりだったそうですが、結果的に34年もの間、休むことなく朗読を続けました。後に、河内氏の推薦により坪井木の実氏が後任を務めています。

現在のオープニングは、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』の第1楽章の一部をテーマ曲に、「心に愛がなければ　どんなに美しい言葉も　相手の胸に響かない - 聖パウロの言葉より - カトリック教会がお送り（お届け）する『心のともしび』」というフレーズで始まります。これは、執筆者による番組が始まった際に、ハヤット神父が朗読の前に聖書の言葉を入れることを考え、田中澄江氏に相談して選ばれた、聖パウロのコリントの信徒への手紙一13章を参考にした言葉です。ベートーヴェンの調べとともにこの言葉が流れ、本編の朗読へと繋がります。

かつてオープニングで流れていたハヤット神父の肉声による「暗いと不平を言うよりも - 」のスローガンは、後に省かれ、現在はエンディングで読まれる形になりました。

番組は、毎月一つのテーマが設定され、それに関連して集められた複数のカトリック信徒による手記を朗読するという形式が主です。河内氏が朗読を務めていた時期、約7年間は執筆者が直接マイクに向かって話す形式になったこともありましたが、1996年からは再び朗読形式に戻りました。姉妹番組の『太陽のほほえみ』は、河内氏による朗読形式を継続していました。

聖職者をはじめ、様々な分野で活躍する20数名の信徒が信仰に基づく体験談などを寄稿しています。

エンディングでは、カトリック教会の聖書や公式サイトの案内、そして「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」というスローガンが読み上げられて番組が終了します。テーマ曲はオープニングと同じです。

12月1日から25日までの期間は、特にイエス・キリストの誕生に関するルカによる福音書第2章に基づく物語が放送されます。この期間は、テーマ曲も普段の『田園』から「今日、キリストは生まれたまいぬ／アンサンブル・エクレジア」に変更されます。

2022年2月には、運動開始70周年を記念して、かつて『太陽のほほえみ』のテーマソングだった「メリメント（Merriment）」が使用されました。聖書や公式サイトの案内の代わりに70周年記念のコメントが述べられ、その後に「暗いと不平を言うよりも〜」のスローガンが続きました。

ラジオ版のネット局

2022年9月現在、各局とも5分枠で放送されています。制作局のKBS京都のほか、多くのラジオ局で放送されています。かつては全国の広い範囲をカバーしており、最大38局で放送されていましたが、広域放送局への一本化や、インターネット普及などの理由により、放送を終了する県域局も見られます。

テレビ版『心のともしび』

テレビ版は、読売新聞社の正力松太郎氏とその長男である正力亨氏（当時の読売ジャイアンツオーナー）の支援を得て、1966年10月に日本テレビ放送網の制作・配信によりスタートしました。週末早朝の15分枠で放送され、開始当初はモノクロでしたが、1972年 4月29日からはカラー放送となりました。

オープニングでは、蝋燭の映像にハヤット神父の肉声による「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」のスローガンが重なっていましたが、後に女性ナレーターの声に変わったり、字幕表示のみになった時期もありました。

歴代の司会者は、三國一朗氏、近藤雅廣氏（レデンプトール会司祭）、末盛千枝子氏（すえもりブックス代表）、村田望氏（声楽家）、塚田若乃氏（女優）らが務めました。

番組の主な内容は、スタジオに信徒を招き、信仰に関する経験談を語ってもらう対談形式でした。初期には、番組後半にハヤット神父やマクドナル神父らが登場し、説教を行うコーナーも設けられていました。

歴史的な出来事としては、1972年にはローマ教皇パウロ6世の世界初となる単独謁見番組を制作しました。また、1981年 1月のヨハネ・パウロ2世の来日時には、徳光和夫氏（当時日本テレビアナウンサー）とカトリック信者であるアグネス・チャン氏を司会に迎え、特別番組『ローマ法王をお迎えしてーヤング＆ホープ大集会ー』を制作しました。この際、教皇を出迎えたハヤット神父は抱擁され、その長年の功績が称えられています。

1998年4月以降は、制作が山梨放送に移行し、日本テレビでの放送は終了しました。NNN系列局の中には、放送を継続したり、打ち切ったりする局がありました。2001年以降は、BS日テレやNNN系列局の一部、TOKYO MX、テレビ神奈川、KBS京都、TVQ九州放送、琉球放送、スカイ・A、楽天TVなど、多様なチャンネルで放送されました。

2006年3月には、「キー局での放送がなくなり、多くの信徒が視聴できない状況では放送の意味を見出しがたい」として一時的に終了しましたが、同年7月にはスカイ・Aの番組枠内で復活を果たしました。

しかし、2019年11月30日の放送をもって、テレビ版は53年1か月の歴史に幕を閉じました。

その他

公式サイトでは、不思議のメダイのプレゼントが行われています。かつては書籍「幸せのおとずれ」や「カトリック要理の友」のプレゼントも実施されていましたが、現在は終了し、その内容は公式サイトで公開されています。番組全体の運動スローガンである「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」は、番組を象徴する言葉として広く知られています。

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