志摩国分寺

志摩国分寺

志摩国分寺は、三重県志摩市阿児町国府に位置する天台宗の寺院です。山号を護国山と称し、本尊には薬師如来を祀っています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つ、志摩国国分僧寺の後継寺院とされています。本項では、現存する寺院の解説とともに、寺院跡推定地である「志摩国分寺跡」についても詳しく掘り下げていきます。

概要

志摩半島東部の台地上に位置する志摩国分寺は、古代国分寺の法灯を受け継ぐ寺院として知られています。現在の境内には、古代の国分寺跡が推定されており、その周辺には志摩国府の集落があったと考えられています。この地が古くから政治・文化の中心地であったことを物語っています。志摩国は下国であり国力が弱かったため、歴史的な記録では、伊勢国や尾張国、三河国からの税が寺の修理費用に充てられていたと記されています。また、大同4年（809年）には、志摩国分寺が伊勢国分寺に移されたという記録も残っています。室町時代に再興された後、江戸時代には現在見られる本堂が再建されました。

古代国分寺跡については、これまで発掘調査が行われていないため、詳しい状況は不明です。しかし、古瓦が採取されていることから、1936年（昭和11年）に推定地が三重県指定史跡に指定されました。また、室町時代の木造薬師如来坐像は三重県指定有形文化財に、本堂と陀羅尼経は志摩市指定有形文化財に指定されています。

歴史

志摩国分寺の創建時期は明確にはわかっていません。国分寺建立の詔が天平13年（741年）に出されたものの、『類聚三代格』によれば、志摩国の国分僧尼両寺の造寺費用が尾張国から割り当てられたのは天平16年（744年）のことでした。

『日本後紀』大同4年（809年）の条には、志摩国分僧寺と国分尼寺が伊勢国分寺に移されたと記されています。また、『延喜式』には、志摩国分寺の修理費用として伊勢国と三河国の正税から稲が割り当てられていたことが記録されています。さらに、志摩国の講読師の費用には尾張国の正税が、読師料には三河国の正税が充てられていました。

室町時代には、応仁の乱で焼失した後、文明17年（1485年）に再興されました。永正4年（1507年）には、現在の本尊である薬師如来像が造られました。江戸時代中期には、幸咸によって寛永寺の末寺となり天台宗に改宗しました。現在の本堂は、天保8年（1837年）に起工され、天保14年（1843年）に完成しました。

志摩国分寺跡

僧寺跡の寺域や伽藍配置については、発掘調査が行われていないため、詳しいことはわかっていません。現在の国分寺境内の北側と西側には平坦な土地が広がっており、軒丸瓦や軒平瓦が出土していることから、この場所が寺院跡であると推定されています。

「志州答志郡国府国分寺古来之事」には、礎石の存在が記されていますが、現在では基壇や礎石の詳しい状況は不明です。

文化財

三重県指定文化財

有形文化財

木造薬師如来坐像：室町時代後期、永正4年（1507年）に仏師定栄によって造られた寄木造の像で、高さは188.0センチメートル。像内背面の墨書銘から、制作年や作者が判明しています。1962年（昭和37年）2月14日に指定されました。

史跡

志摩国分寺跡：1936年（昭和11年）1月22日に指定。

志摩市指定文化財

有形文化財

志摩国分寺本堂：江戸時代の天保14年（1843年）に建てられた建造物。精巧な彫刻が施されており、1990年（平成2年）6月25日に指定されました。

紙本墨書陀羅尼経：平安時代に制作された巻子本で、全長は817センチメートル。本尊薬師如来坐像の台座から発見され、1972年（昭和47年）3月31日に指定されました。

脚注

原典

出典

参考文献

境内説明板
地方自治体発行
『三重県史 資料編 考古2』三重県、2008年。
『志摩市の文化財 (PDF)』志摩市教育委員会、2018年。 - 志摩市ホームページへのリンク
事典類
『日本歴史地名大系 24 三重県の地名』平凡社、1983年。ISBN 4582490247。
「国府村」、「志摩国分寺跡」の項
その他
中世諸国一宮制研究会編『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000年。ISBN 978-4872941708。

外部リンク

志摩国分寺跡 - 三重県教育委員会

もう一度検索