恋のバカンス (曲)

恋のバカンス

「恋のバカンス」（仏：VACANCE DE L'AMOUR）は、1963年4月にリリースされた、日本の女性デュオ、ザ・ピーナッツによる楽曲です。作詞は岩谷時子、作曲・編曲は宮川泰が手掛けました。

この楽曲は、前年のヒット曲「ふりむかないで」に続き、ザ・ピーナッツのオリジナル楽曲として大きな成功を収めました。特に、ジャズの四つ打ちのリズムを取り入れ、当時の歌謡曲としては斬新なほどスウィング感に溢れた楽曲として話題を呼びました。シングル発売直後から大きな反響を呼び、同じ年にヒットした舟木一夫の「高校三年生」や梓みちよの「こんにちは赤ちゃん」、坂本九の「見上げてごらん夜の星を」などと並ぶ空前の大ヒットを記録しました。一方で、これらの同年のヒット曲が多数選出された「日本の歌百選」には、この曲だけが選ばれなかったという一面もあります。

音楽的なヒットだけでなく、社会的にも大きな影響を与えました。東レと渡辺プロダクションが共同で企画したサマーウェア新商品「バカンス・ルック」（1963年6月発売）のプロモーションにも活用され、フランス語で「休暇」を意味する「バカンス (vacances)」という言葉が、日本国内で流行語となる社会現象にも寄与したとされています。

作曲・編曲を手掛けた宮川泰は、この楽曲により1963年の第5回日本レコード大賞で編曲賞を受賞しています。また、同年の第14回NHK紅白歌合戦でも、ザ・ピーナッツによってこの曲が披露されており、その映像はNHKに保存されています。

発表から長い年月を経た現在でも、そのメロディーは広く知られており、多くの世代に親しまれ続けているザ・ピーナッツの代表曲の一つです。

さらに、この楽曲は海を越え、当時のソビエト連邦でも大きな人気を博しました。国営放送局ゴステレラジオの東京特派員であったヴラジーミル・ツヴェートフがこの曲に魅了され、本国への紹介を積極的に行った結果、1965年には人気歌手ニーナ・パンテレーエワによってロシア語でカバーされ、ソビエト連邦国内でも大ヒットを記録しました。当初、パンテレーエワ版は「幸せな恋の歌」というタイトルでしたが、ザ・ピーナッツによる原曲のロシア語直訳タイトルである「カニークルィ・リュブヴィー (Каникулы любви)」が広く浸透し、現在もこの名称で親しまれています。現在、ロシアでは世代を超えて広く認知されており、日本の楽曲であることを知らない人もいるほど国民的な愛唱歌となっています。また、ソビエト時代からの名残で、ロシア国内では作曲者名が「Ya.ミヤガワ (Я. Миягава)」と表記されるケースが多く見られます。これは「泰（ひろし）」が「やすし」と誤って伝わったものが定着した結果と考えられています。

スタッフ

作詞：岩谷時子
作曲・編曲：宮川泰
演奏：松宮庄一郎とシックス・ジョーズ・ウイズ・ストリングス
出版者：渡辺音楽出版株式会社
レコード会社：キングレコード

カバー

「恋のバカンス」は、発表以来、国内外の数多くのアーティストによってカバーされています。代表的なカバーには以下のようなものがあります。

W（ダブルユー）によるカバー

2004年にモーニング娘。のメンバーであった加護亜依と辻希美によるユニット、W（ダブルユー）のデビューシングルとしてリリースされました。カップリングには同じくザ・ピーナッツのカバー曲「月影のナポリ」と「悲しき16才」が収録されています。

その他のカバーアーティスト（発表年順）

1963年：カテリーナ・ヴァレンテ
1977年：キャンディーズ
1978年：甲斐よしひろ
1980年：竹野屋セントラルヒーティング（FM東京『パイオニア サウンド・アプローチ』でのセッション。山下達郎、竹内まりや、桑田佳祐らが参加。メインボーカルは竹内まりや）
1981年：茂村泰彦&ミスティーブロック
1982年：畑中葉子
1983年：中尾ミエ、伊東ゆかり、岩崎宏美、大橋純子、松田聖子、河合奈保子（フジテレビ「ミュージックフェア」番組内）
1984年：竹中直人
1987年：Be-2（牛乳石鹸CMソング）、YoKo（秋野暢子）
1991年：Mi-Ke
1992年：田中美奈子、a・chi-a・chi
1993年：あがた森魚
1997年：Jasmine（北京語カバー）
1999年：VENUS、Vie Vie（本田技研工業「S-MX」CMソング）
2000年：藤井尚之、Bluem of Youth
2001年：庄野真代with浜田山〜ず
2002年：渡辺美里
2003年：スクーターズ、Sandii、Kan-J
2006年：ARAHIS
2007年：DUNCAN'S DIVAS
2008年：桑田佳祐（Act Against AIDS 2008 ひとり紅白歌合戦）
2009年：茉奈 佳奈、ダウト
2011年：大内義昭&ハルカミホ
2014年：ザ・リリーズ
2016年：チャラン・ポ・ランタン、FUNK THE PEANUTS、折原九瑠璃・折原舞流（デュラララ!!×2 結 BD/DVD特典）
2017年：メロディー・チューバック
2019年：ClariS、スピッツ（『見っけ』デラックスエディション特典CD、崎山龍男ボーカル）
2020年：齊藤京子・加藤史帆（第62回日本レコード大賞授賞式）
2024年：明美（高橋李依）、バス江（斉藤貴美子）（テレビアニメ『スナックバス江』エンディングテーマ）

桑田佳祐は自身のラジオ番組でも度々弾き語りでこの曲を披露しています（音源はCD化されていません）。また、プロサッカークラブ、モンテディオ山形のチャント（応援歌）「山形バカンス」の原曲としても知られています。

（参考文献・出典：『ザ・ピーナッツ メモリーズBOX』解説書など）

関連項目

渡辺プロダクション
渡辺晋
和製ポップス
cherry blossom (Pritsのアルバム) - カバー候補に挙がったものの採用されなかったアルバム

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