吉田定房

吉田 定房

吉田定房（よしだ さだふさ）は、鎌倉時代の後期から南北朝時代にかけての特徴的な公卿として知られています。彼は藤原北家勧修寺流の吉田家に生まれ、父親の吉田経長は権大納言で、亀山上皇や後宇多上皇に仕えた重鎮でした。この影響を受けて、定房も早い段階から上皇に仕え、その信任を得ていきます。

彼の官歴は、従五位下から始まり、数々の昇進を経て後には従一位・内大臣の地位に達しました。正安3年（1301年）、後二条天皇即位の際には、特に重用され、院評定衆や伝奏に任ぜられました。また、徳治元年（1306年）には後宇多上皇の使者として鎌倉に派遣され、その信任を強固なものとしました。

特筆すべきは、後醍醐天皇の即位後、彼の側近として大いに活躍した点です。文保2年（1318年）には天皇に仕え、北畠親房、万里小路宣房と共に「後の三房」と称されたことからも、その重要性が伺えます。彼は尊治親王の乳父の役目も担い、皇族との絆を深め、政権内での役割も拡大しました。また、元亨元年（1321年）には後醍醐天皇の親政開始に伴い、伝奏に任じられた他、重要なポジションを歴任しました。

元弘元年（1331年）、彼は元弘の乱において後醍醐天皇を支援する側に立ったが、その後の動きも複雑です。討幕の密議が発覚すると、彼は一時的に後伏見上皇のもとに移るなど、その動向には多くの解釈が存在します。元弘3年（1333年）には、鎌倉幕府の崩壊後も後醍醐天皇に仕え続け、重用されました。

建武政権が成立すると、定房は内大臣や民部卿として、さらにて、さまざまな要職を務めましたが、後に建武政権は倒れ、彼は吉野の南朝へ出奔します。この際、彼は民部卿を解官されますが、その点については異なる見解が存在します。彼が後醍醐天皇の玉座を追い、共に逃げたのか、あるいは北朝に仕えたというのか、その詳細は今も議論の余地があります。

後に吉野にて開催された歌会では、彼の詠んだ和歌が『新葉和歌集』に採録されるなど、文化的な側面でも活動が見られました。しかし、定房は延元2年（1337年）に65歳で逝去し、時に後醍醐天皇の側近として大きな足跡を残しました。彼の死は、古参の腹心である坊門清忠と重なり、後醍醐天皇にとっても大きな痛手であったと伝えられています。

定房の著作には日記『吉槐記』があり、彼の生活や考えを知る手がかりとなっています。また、弟の隆長が書き記した『吉口伝』も残されています。

彼の業績や生涯についての研究は、現在でも多くの興味を集めており、吉田定房は日本の歴史における重要な人物の一人として位置付けられています。彼の生涯を通じての仕事や人間関係は、当時の政治状況を深く反映し、彼自身の信念や忠誠心もまた、時代を越えて語り継がれることでしょう。

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