恭雲院

恭雲院：真田家を支えた女性

恭雲院（きょううんいん）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての女性で、甲斐武田氏の家臣・真田幸綱（幸隆）の正室として知られています。彼女の正確な生没年は不明ですが、真田家の隆盛に大きく貢献しました。

生涯

恭雲院は、海野棟綱や真田氏の譜代家老であった河原隆正の妹で、海野氏の分家の家柄でした。彼女は真田幸綱に嫁ぎ、真田信綱、真田昌輝、真田昌幸、真田信尹、金井高勝といった、後に真田家を支える重要な人物たちを産みました。幸綱には他に二人の娘（長坂昌国室、遠山右馬助室）がいますが、彼女たちの生母は不明です。長男の信綱が天文6年（1537年）に生まれたことから、幸隆と恭雲院の結婚は天文年間初期と推測されています。

『系図纂要』には、武田家の譜代家老・飯富虎昌の娘が幸綱に嫁いだとする説も存在します。飯富虎昌が義信事件で失脚・処刑された後は、恭雲院が再び正室として迎えられたと考えられています。天正2年（1574年）に幸綱が死去した後も、彼女は真田家を支え続けました。

『羽尾記』によれば、恭雲院の出自を羽尾幸全の娘とする説もありますが、研究者の柴辻俊六はこの説の根拠は弱いとしています。

天正10年（1582年）の織田信長の武田征伐による甲斐武田家滅亡後、恭雲院は上野国と信濃小県郡・佐久郡を支配していた織田信長の家臣・滝川一益のもとに人質として出されました。その後、武田氏から離反して織田氏に従属した木曾義昌へ引き渡されました。同年9月に真田家が徳川家に従属したことに伴い、翌11年2月には徳川家康の人質となりました。天正13年（1585年）ごろに解放され、真田家に戻ったとされています。

彼女の没年には二つの説があります。真田氏の菩提寺である長野県上田市の長谷寺墓碑には天正20年5月20日（1592年6月29日）とあり、同寺の過去帳には文禄2年8月1日（1593年8月27日）と記されています。1年余りの差がありますが、この頃に亡くなったと考えられています。戒名は恭雲院喜山理慶大姉。

登場作品

恭雲院は、以下の作品に登場しています。

『風林火山』（2007年、NHK大河ドラマ、演：清水美砂）
『真田丸』（2016年、NHK大河ドラマ、演：草笛光子）

参考文献

柴辻俊六『真田昌幸』吉川弘文館〈人物叢書〉、1996年。ISBN 978-4-64-205202-3。
丸島和洋『真田一族と家臣団のすべて』KADOKAWA〈新人物文庫〉、2016年。ISBN 978-4-04-601099-5。

恭雲院は、激動の時代を生き抜き、真田家を支えた重要な女性でした。彼女の生涯は、真田家の歴史を語る上で欠かせない一部分です。

もう一度検索