恵野駅

恵野駅（めぐみのえき）

北海道の北部、宗谷管内の枝幸郡中頓別町字上頓別という場所に、かつて「恵野駅」という名の鉄道駅が存在しました。この駅は、日本国有鉄道（国鉄）から北海道旅客鉄道（JR北海道）へと引き継がれた天北線に属していましたが、路線の廃止に伴い、1989年（平成元年）5月1日をもってその歴史に幕を閉じた廃駅です。

歴史

恵野駅の始まりは、正規の「駅」ではありませんでした。1956年（昭和31年）5月1日、この地に「恵野仮乗降場」として設置されたのが最初です。これは国鉄の北見線上に設けられたもので、「局設定」による、主に地元住民の便宜を図るための簡易な乗降場でした。

その後、1961年（昭和36年）4月1日には、路線の名称が北見線から天北線へと改称されましたが、恵野仮乗降場は引き続き天北線の施設として存続します。

日本の鉄道事業が大きく転換点を迎えた1987年（昭和62年）4月1日、国鉄の分割民営化が実施され、恵野仮乗降場はJR北海道へと移管されると同時に、正式な旅客駅である「恵野駅」へと昇格を果たしました。仮乗降場としての誕生から約31年を経て、ようやく駅としての看板を掲げることになったのです。

しかし、駅としての命脈は長くありませんでした。天北線は、当時の法律に基づいて指定された「特定地方交通線」の一つであり、廃止の対象とされていました。時代の流れの中で利用者の減少などが進み、やがて路線の廃止が決定されます。そして、恵野駅は他の天北線の駅と共に、1989年（平成元年）5月1日、天北線の全線廃止という運命を迎え、開業から33年の歴史に終止符を打ち、廃駅となりました。

駅構造

恵野駅が廃止された時点では、単式ホーム1面1線のみを持つシンプルな地上駅でした。仮乗降場が出自であったため、駅舎のような大規模な建物は建設されず、終始無人駅として営業していました。利用者のための最低限の設備として、簡素な待合所だけが設けられていたことが記録されています。

駅周辺

駅の周囲は、広大な原野がどこまでも広がっているのが特徴的な風景でした。生活圏や集落からは離れた、静かで自然豊かな環境に位置していたと言えます。

駅の近くには、国道275号（頓別国道）が通っており、また頓別川の存在も確認できます。交通アクセスとしては、かつて宗谷バスの天北宗谷岬線に「恵野」停留所が設置されており、鉄路以外の移動手段も存在しました。

駅跡

恵野駅が廃止されてから長い年月が経過しました。2011年（平成23年）の調査時点では、かつて駅が存在した場所には、プラットホームや待合所といった鉄道関連の施設や構造物は一切残されていませんでした。駅の跡地は再び自然の一部と化し、周囲の広大な原野と一体となっています。

隣の駅

天北線が現役であった頃、恵野駅の両隣には以下の駅がありました。

* 北海道旅客鉄道 天北線
上頓別駅 - 恵野駅 - 敏音知駅

恵野駅は、短いながらも地域の交通を支えた仮乗降場・駅として、その歴史に名を刻んでいます。

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