愛知川宿

中山道 愛知川宿：歴史と文化が息づく宿場町

愛知川宿は、近江国神崎郡（現在の滋賀県愛知郡愛荘町）に位置し、中山道65番目の宿場として栄えました。東海道の土山宿から分岐する御代参街道との合流点であり、交通の要衝として重要な役割を果たしました。

古代から近世へ

愛知川宿は、もともと愛知川の渡津集落として発展し、東山道の宿場のひとつとなりました。平安時代の歌人・赤染衛門もこの地に宿泊し、歌を詠んでいます。また、太平記にも勅使や北畠顕家が愛知川宿を経由した記述があり、古くから交通の要所であったことが伺えます。

江戸時代には、宿場町として整備され、1843年には199軒の家と28軒の旅籠屋が軒を連ね、929人が暮らしていました。本陣は西澤甚五左衛門が、脇本陣は中田清次郎が務めました。

助郷と無賃橋

中山道では、各宿場に助郷が定められ、周辺の村々が人馬の提供などの負担を担っていました。愛知川宿では、20か村が大助郷として指定され、様々な負担が課せられました。負担軽減を求める村々の訴えも度々起こりましたが、状況はなかなか改善されませんでした。

1831年には、成宮弥次右衛門によって愛知川に橋が架けられました。通行料を取らなかったため、「無賃橋」と呼ばれ、多くの旅人に利用されました。

一渓茶と越川大福

愛知川宿は、江戸時代から「一渓茶」という煎茶の名産地として知られていました。また、和菓子文化も広まり、特に不飲川のほとりで売られていた「越川大福」は人気を集めました。現在も中山道沿いには菓子店が点在し、宿場の名残を伝えています。

宿場町の史跡・みどころ

愛知川宿には、歴史的な史跡や見どころが数多く残っています。

宝満寺: 真宗大谷派の寺院で、蓮如上人御影道中の定宿となっていました。本堂や正門などが残っています。
豊満神社: 神功皇后の軍旗を祀って創建されたと伝えられ、源頼朝をはじめ多くの武将が戦勝祈願に訪れました。鎌倉時代の四脚門は国の重要文化財です。
竹平楼: 1758年創業の旅籠で、明治天皇御小休の部屋が保存されています。現在は料亭として営業しており、国の登録有形文化財です。
旧田中家住宅: 麻織物商の別邸で、現在は料亭「近江商人亭」として営業しています。こちらも国の登録有形文化財です。
藤居本家: 1831年から酒造を営む老舗で、連続テレビ小説「甘辛しゃん」のロケ地にもなりました。国の登録有形文化財です。
近江鉄道愛知川橋梁: 愛知川にかかる鉄橋で、明治時代にイギリスで製造されました。国の登録有形文化財となっています。

周辺の観光スポット

愛知川宿の周辺にも、小幡商人発祥の地や重要伝統的建造物群保存地区である五個荘町金堂地区、清水鼻の名水、奥石神社、老蘇の森など、魅力的な観光スポットが点在しています。

愛知川宿は、歴史と文化が息づく魅力的な宿場町です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。

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