慕容厲

慕容厲（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物で、昌黎郡棘城県の出身です。

生涯

慕容厲は前燕に仕え、散騎常侍に任じられました。元璽3年（354年）4月には、下邳王に封じられています。その後、撫軍将軍にも任じられ、軍事面で重要な役割を担いました。

建熙7年（366年）10月、慕容厲は兗州へ侵攻しました。この際、東晋の泰山郡太守であった諸葛攸は淮南へ敗走し、慕容厲は魯郡・高平郡など数郡を攻略して守りを固め、帰還しました。この侵攻により、前燕は一時的に勢力を拡大することに成功しました。

建熙8年（367年）2月、鎮北将軍慕容桓と共に勅勒討伐に向かいました。同年7月、慕容厲らは勅勒の軍を破り、牛馬数万頭を得るという戦果を挙げました。しかし、この遠征の帰路、慕容厲の軍が代国を通過した際、黒きび畑を荒らしてしまったことが、後の代国との関係悪化を招きます。代王拓跋什翼犍はこれに激怒し、前燕領の雲中を失陥させる原因となりました。

建熙10年（369年）6月、東晋の大司馬桓温が前燕に侵攻すると、皇帝慕容暐は慕容厲を征討大都督に任じ、歩騎2万を率いて黄墟で迎え撃たせました。しかし、この戦いで慕容厲は桓温率いる東晋軍に大敗を喫し、単騎で鄴へ敗走するという失態を演じてしまいます。

建熙11年（370年）8月、前秦が侵攻してくると、慕容暐は慕容厲と太傅慕容評に30万余の兵を率いて迎撃させました。しかし、この戦いの詳細や、慕容厲がどのような役割を果たしたのかは、史書には詳しく記されていません。前秦の勢力が拡大する中で、前燕は次第に追い詰められていき、最終的には滅亡することになります。慕容厲のその後の事績は、史書に記されておらず、彼の生涯は謎に包まれたままとなっています。

参考文献

『晋書』巻111
『資治通鑑』巻99、巻101、巻102
* 『十六国春秋』巻28、巻29

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