慶應義塾図書館旧館

慶應義塾図書館旧館：歴史と文化が息づく学び舎

慶應義塾図書館旧館は、東京都港区三田にある慶應義塾大学のキャンパス内に位置し、その美しい外観と歴史的価値から、三田演説館と並び、慶應義塾大学を象徴する建造物の一つとして広く知られています。この建物は、国の重要文化財にも指定されており、その歴史と文化的な意義は計り知れません。

歴史

創設期

慶應義塾の創設者である福澤諭吉は、早くから図書館の重要性を認識していました。1866年に刊行された『西洋事情』では、西洋諸国の「文庫」を紹介し、その重要性を説いています。1871年に慶應義塾が三田に移転すると、旧島原藩邸の「月波楼」の一室が図書室として利用されました。その後、蔵書数の増加に伴い、1887年には煉瓦講堂内に書籍館が設けられましたが、独立した図書館の建設を求める声が高まりました。

図書館の建設

1907年、慶應義塾創立50周年を記念し、図書館建設の機運が高まりました。募金活動の結果、30万円以上の資金が集まり、建設に向けて本格的に動き出しました。建設にあたっては、木造か煉瓦造かで意見が分かれましたが、最終的に不燃性の煉瓦造とすることが決定しました。設計は曾禰達蔵に依頼され、中條精一郎によるゴシック様式のプランが採用されました。1908年12月に着工し、1912年4月には戸田組によって建物が引き渡されました。

開館

1912年5月、図書館は正式に開館しました。開館式では、鎌田栄吉塾長の挨拶や、徳川頼倫、徳川家達、西村竹間らによる祝辞が行われ、建物はイルミネーションで彩られました。また、開館を記念して、アルバムや絵葉書、純銀メダルなどが販売されました。同年11月からは、一般の利用者も入館が可能となりました。

開館当初、2階の大閲覧室には150席が設けられ、閲覧者は目録カードを提示して書籍を借りるシステムでした。書庫は閉架式で、地階から4階まであり、中央廊下と南北2室で構成されていました。収容力は20万冊とされましたが、将来的な増築も考慮された設計でした。大階段踊り場には、和田英作原画、小川三知制作によるステンドグラスが設置され、その壮麗さを際立たせていました。

関東大震災

1923年の関東大震災では、慶應義塾の建物も大きな被害を受けました。図書館も例外ではなく、亀裂が生じるなどの損傷を受けました。その後、応急修理と精密検査が行われ、鉄骨を加えることで修復可能と判断されました。1927年から本格的な修理が行われ、第二書庫も増築されました。震災後には、売店が開業し、学生や教職員の憩いの場となりました。

戦時下

第二次世界大戦中、図書館は軍国主義の影響を受け、一部の文献が禁閲対象となりました。ステンドグラスの図案も問題視されました。太平洋戦争が始まると、来館者の監視が強化され、閲覧できる書籍も制限されました。1945年の空襲では、建物の一部が焼失しましたが、戦後に復旧工事が行われました。

戦後

終戦後、図書館の復旧工事が始まりました。焼失したステンドグラスは、透明ガラスに代えられました。1951年には文学部図書館学科が創設され、図書館内に図書室が設けられました。1957年には、インドのネルー首相が図書館のバルコニーで演説を行いました。その後も、図書館は増築や改修を重ね、現在の姿に至ります。1969年には、初期の建物部分が国の重要文化財に指定されました。1982年には新館が完成し、旧館は記念図書館・研究図書館として改修されました。

平成期以降

阪神淡路大震災後の耐震診断で強度不足と判定されましたが、当時の技術や費用面から耐震化は見送られました。2015年には、耐震改修工事と保存修理工事が決定され、2019年に完了しました。現在、図書館は三田メディアセンターによって管理・運営されています。

建物

外観

図書館旧館は、赤煉瓦と花崗岩で構成された壮麗な外観が特徴です。ゴシック様式の洋風建築であり、その美しさは見る者を魅了します。建物は本体部分、書庫、八角塔からなり、その建坪は約208坪です。

館内

玄関上部には、「創立五十年紀念慶應義塾図書館」の文字が掲げられています。2階バルコニー上部にはペンマークのレリーフが飾られています。書庫には、ラテン語で「TEMPUS FUGIT（光陰矢の如し）」と書かれた大時計が設置されています。玄関ホールには、彫刻家北村四海の作品である「手古奈」の大理石像があります。

館内には、福澤研究センター、AVコーナー、カフェ八角塔、福澤諭吉記念慶應義塾史展示館、小会議室、斯道文庫などが設置されています。福澤諭吉記念慶應義塾史展示館では、福澤諭吉の生涯や慶應義塾史に関する資料が展示されています。斯道文庫は、国内外の和漢書籍を所蔵しています。

文学の丘

図書館の東側には、「文学の丘」と呼ばれる小高い丘があり、小山内薫の胸像、吉野秀雄、久保田万太郎、佐藤春夫の文学碑が設置されています。これらの文学碑は、慶應義塾ゆかりの文人を顕彰するために建てられました。

アクセス

図書館へのアクセスは、以下の通りです。

JR山手線・京浜東北線 田町駅から徒歩8分
都営浅草線・都営三田線 三田駅から徒歩7分
* 都営大江戸線 赤羽橋駅から徒歩8分

まとめ

慶應義塾図書館旧館は、その美しい外観と歴史的価値から、慶應義塾大学の象徴的な存在として広く親しまれています。この建物は、図書館としての役割だけでなく、福澤諭吉の精神や慶應義塾の歴史を伝える文化施設としての役割も担っています。その歴史と文化は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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