山田喜之助

山田喜之助

山田喜之助（やまだ きのすけ）は、安政6年6月1日（1859年6月30日）に生まれ、大正2年2月20日（1913年2月20日）に亡くなった、日本の弁護士、政治家です。彼は衆議院議員、衆議院書記官長、そして司法次官といった要職を歴任し、日本の法曹界と政治の世界で重要な役割を果たしました。また、東京代言人組合（現在の東京弁護士会）の会長も務め、東京専門学校（現在の早稲田大学）や英吉利法律学校（現在の中央大学）の創立にも深く関わりました。

生い立ちと教育

山田喜之助は、大坂・船場の商家に、八郎兵衛の次男として生まれました。生家は「桜井屋」という家号で知られ、江戸時代から続く裕福な薬種砂糖商でした。幼少期には母を亡くし、6歳から儒学者・藤沢南岳の泊園書院で学び、漢学、特に漢詩の素養を身につけました。その後、大阪英語学校にも通いました。

明治9年（1876年）、東京開成学校（後の東京大学）に官費生として入学し、法律を学びました。明治15年（1882年）に東京大学を卒業し、法学士の学位を取得。卒業後は法律事務に従事する傍ら、大隈重信を助けて東京専門学校の開設に尽力しました。また、立憲改進党にも参加しました。さらに、英吉利法律学校の創立にも関与しました。

法曹界と政治の世界での活躍

明治18年（1885年）、司法省権少書記官に任じられたのを皮切りに、司法省参事官、大審院検事、大審院判事を歴任しました。しかし、法典論争で延期派に立ったことで司法大臣・山田顕義と対立し、職を辞しました。明治24年（1891年）には弁護士となり、京橋区に事務所を開設。明治30年（1897年）まで訴訟事務に携わりました。その間、東京代言人組合の会長に3度選出されたほか、英吉利法律学校の東京法学院への改組にも尽力し、海軍主計学校の教授も兼任しました。

さらに、法典調査会の委員も務めました。明治30年（1897年）には衆議院書記官長に任ぜられ、正五位に叙せられました。明治31年（1898年）には、日本最初の政党内閣である第1次大隈内閣で司法次官に抜擢されました。同年3月、衆議院議員臨時総選挙で東京府第3区から選出され、衆議院議員にも当選しました。同年8月の再選挙でも当選しましたが、尾崎行雄は、山田が司法次官の職権を濫用して選挙を助けたことが、与党内の対立を招き、内閣瓦解の一因になったと指摘しています。

人物像と晩年

山田喜之助は、豪快な人柄で知られていました。大阪の商家出身であり、学生時代には通学途中に掛金を集めるなど、苦労も経験しました。また、非常に酒を好み、晩年病気で弁護士を廃業した後も、飲酒はやめなかったそうです。「酒聖」「酒仙」と自称するほどの酒豪で、友人たちを困らせることもありました。

晩年は病気がちとなり、牛込区市谷薬王寺前町の自宅に引きこもる生活を送りました。大正2年（1913年）2月20日に亡くなり、築地本願寺で仏式による葬儀が執り行われました。

家族と親族

山田家は、代々「八郎兵衛」を襲名する家系で、喜之助の父・八郎兵衛は「行沢富三郎」という名でした。富三郎は、桜井屋の娘と結婚して家を継ぎました。喜之助の異母弟には法学者の山田正三がおり、その妻は井上毅の三女でした。また、妻の鳰は儒学者・岡松甕谷の次女で、岡倉天心や高橋健三らの妻たちと婦人団体「清迎会」を組織しました。長男の紹之助は工学者、三男の作之助は弁護士・裁判官として活躍しました。

親族には、井上毅（官僚、政治家）、井上匡四郎（鉱山学者、政治家）、岡松甕谷（儒学者）などがいます。

栄典

1885年'>[正七位]
衆議院議員章(1898年)

参考文献

『日本現今人名辞典』日本現今人名辞典発行所、1900年。
吉井庵千暦『名士の笑譚』大学堂、1900年。
山崎謙編『衆議院議員列伝』衆議院議員列伝発行所、1901年。
鈴木光次郎編『現代百家名流奇談』実業之日本社、1903年。
* 衆議院事務局編『衆議院議員略歴 第1回乃至第19回』衆議院事務局、1936年。

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