戻橋 (映画)

戻橋（もどりばし）

『戻橋』は、1929年に公開された日本の中篇劇映画で、監督はマキノ正博です。この作品は、マキノ・プロダクションによる全てが音声付きの映画、ディスク式トーキーとして製作されました。これにより、マキノプロが初めて手掛けたオール・トーキー作品です。さらに、本作は白黒のスタンダードサイズで作られました。

あらすじ

物語は、愛宕山に住む鬼女が洛中に現れ、人々を襲うという恐ろしい状況から始まります。そのため、夜になると人々は道を歩くこともできなくなりました。ある晩、そんな洛中の警備を担当している渡辺綱が、堀川戻橋を通りかかります。そこで彼は、美しい女性、扇折早百合と出会います。早百合は道連れになって欲しいと頼み、二人は共に戻橋を渡り始めます。

しかし、渡辺綱が水面に映る影に目をやると、そこには恐ろしい鬼女の顔が映り込んでいました。彼はその正体に気づきます。激しい戦闘が繰り広げられ、最終的に鬼女に引き上げられた綱は、愛用の刀・髭切丸を使い鬼女の片腕を見事に斬り落とし、物語は大団円を迎えます。

概要

この映画は、歌舞伎の「戻橋」を元にした活動写真です。マキノプロ自体の始まりは新たなトーキー作品の製作を試みたことにあると言えます。実際に『戻橋』は、マキノプロの活動の第一歩として位置付けられています。制作当時、日本にはトーキーの技術がまだ完全には浸透しておらず、音声上映の技術が試行錯誤の段階にありました。このため、牧野省三は、トーキー技術の開発に尽力し、アメリカで発表された『ジャズ・シンガー』からヒントを得て、日本でも本格的な音声映画を実現しようとしました。

公開されたのは1929年7月5日で、東京の浅草・日本館での初映で大ヒットを記録しました。それからの数ヶ月で全国各地で上映されることになり、観客から非常に高い評価を受けました。しかし、牧野は音響技術に不満を感じており、更なる技術の進展を期待していたようです。彼が本作が公開されてわずか20日後に他界したことは、映画史にとっても残念な出来事として記憶されています。

スタッフとキャスト

この作品の監督を務めたのはマキノ正博であり、原案は父のマキノ省三です。撮影は三木稔が担当し、振付は若柳吉兵衛、音楽には岸沢仲蔵などの著名なアーティストが関わっています。特に、三味線や長唄は重要な役割を果たしており、日本伝統音楽の要素が豊富に取り入れられています。

キャストには、渡辺綱役の南光明、早百合役のマキノ智子など、多くの重要な役者が名を連ねています。鬼女を演じたのはマキノ登六で、彼の強い演技力が作品全体を引き締めています。

『戻橋』は日本の映画の歴史において、重要な転機となった作品の一つであり、時代劇の魅力と音声映画の可能性を示すものとなりました。

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