扇島

扇島（おおぎしま/おうぎしま）とは

扇島は、東京湾に位置する人工島で、神奈川県川崎市川崎区と横浜市鶴見区に属しています。島の面積は、川崎市側が3.96平方キロメートル、横浜市側が2.76平方キロメートルです。この島は重要な港湾施設を有しており、国際的な船舶も多く停泊するため、SOLAS条約（海上人命安全条約）が適用されています。そのため、東京湾岸道路を通行する場合を除き、関係者以外の立ち入りは厳しく制限されています。

地理

扇島は、北を京浜運河、南を東京湾に面した場所に位置しています。島の中心部を東西に首都高速湾岸線が走り、東扇島へは扇島大橋（JFEスチールが保有する私道）が架かっています。島内には、JFEスチール東日本製鉄所京浜地区や石油備蓄基地などの大規模な施設があります。扇島全体が川崎港と横浜港の一部であり、国際的な物流拠点として重要な役割を果たしています。そのため、国際テロ対策の観点からも、上陸できる人物は厳格に管理されています。

島の中央部には市境があり、その南端は川崎市の最南端と横浜市の最東端が同じ地点に位置するという珍しい場所となっています。

歴史

扇島の歴史は、京浜工業地帯の開発とともに始まりました。京浜運河などの開削工事で出た土砂が、防波堤の外側に投棄され、その積み重なった土砂が砂州を形成しました。この砂州が、開発を行った浅野財閥の商標である扇にちなんで、「扇島」と名付けられました。

昭和初期には、鶴見臨港鉄道によって海水浴場が開業し、京浜地区からの観光客で賑わいました。しかし、戦時中の中断や水質汚染の影響で、1958年には海水浴場の営業は終了しました。その後、この地は日本鋼管（現在のJFEスチール）の原料置き場として整備されることとなりました。

扇島計画

1969年、日本鋼管は、分散していた製鉄所を扇島に集約する「扇島計画」を策定しました。この計画は、公害対策と生産性向上を目的としていました。1970年には公害防止協定が締結され、1971年には埋め立て免許が交付されました。

埋立工事は、水深が深く、軟弱地盤であるという悪条件の中、千葉県富津市の浅間山から土砂を運び、シルトを固めるサンドマット工法を採用することで、当初の予定よりも早く完了しました。この土木工事は、1975年に土木学会技術賞を受賞しています。また、首都高速湾岸線への用地提供や、130万平方メートルにも及ぶ緑化も行われました。

埋め立てと並行して製鉄所の建設も進められ、1976年には第一高炉、1979年には第二高炉に火が入れられました。その一方で、従来の地区にあった7つの高炉は、1978年までにすべて火が消されました。また、東扇島とを結ぶ扇島大橋も建設され、その中央部分は清水造船所で組み立てられた橋桁を直接架設するという工法が採用されました。

地名の由来

扇島の名前の由来には、二つの説があります。一つは、扇町の沖合いに位置することから、もう一つは、できた砂州が扇形であったことから自然にそう呼ばれるようになったという説です。

扇島の読み仮名

扇島の読み仮名は、川崎市側が「おおぎしま」、横浜市側が「おうぎしま」と異なります。これは、扇町の読み仮名が「おうぎまち」であることに由来します。扇町の名は、浅野総一郎の家紋である扇にちなんでおり、現代仮名遣いでは「おうぎ」と読みます。

今後の計画

2023年にJFEスチール東日本製鉄所扇島地区の高炉が休止されたことに伴い、川崎市側では、次世代産業の研究開発施設や高度物流施設、商業施設などへの大規模な土地利用転換が計画されています。2030年までには、一部の施設が供用開始される予定です。

交通

扇島へは、首都高速湾岸線が通っていますが、出入口は設置されていません。西側の大黒埠頭とは、鶴見つばさ橋で繋がっています。一般道である国道357号も通過する計画がありますが、まだ事業化されていません。しかし、大規模な土地利用転換に合わせて、首都高速湾岸線の出入口や東扇島までの一般道が整備される計画があります。

陸路では、川崎市川崎区水江町からJFEスチール海底トンネル（私道）を通って東扇島へ行き、そこから扇島大橋を渡ってアクセスします。

SOLAS条約に基づいて、扇島には厳重な保安体制が敷かれており、JFEスチールが主催する見学会や学校の校外学習など、限られた場合を除き、関係者以外の立ち入りは許可されていません。制限区域内に許可なく立ち入ると、法律に基づいて処罰されることがあります。ただし、首都高速湾岸線およびその管理地は制限区域外です。

事業所

扇島には、多くの事業所が存在します。横浜市側と川崎市側で、事業所数と従業員数の推移は異なっており、経済センサス調査によって詳細なデータが公表されています。

主な施設

扇島には、以下のような主要な施設があります。

JFEスチール東日本製鉄所扇島地区
ENEOS扇島風力発電所（川崎製油所跡地）
東京ガス扇島LNG基地（LNG地下貯蔵タンク）
扇島パワー（LNG火力発電所）（東亜石油貯油地跡地）
東京電力リニューアブルパワー扇島太陽光発電所

その他

扇島は、映画『ガメラ大怪獣空中決戦』のクライマックスシーンの舞台としても知られています。

関連項目

神奈川県の島一覧

この文章は、扇島の歴史、地理、産業、未来計画について包括的に解説しています。扇島の多面的な魅力を理解する上で、役立つ情報源となるでしょう。

もう一度検索