有馬良橘

有馬良橘：海軍大将、そして神職

有馬良橘（ありま りょうきつ、1861年12月16日 - 1944年5月1日）は、幕末から昭和にかけて活躍した日本の海軍軍人であり、神職です。最終階級は海軍大将。和歌山県和歌山市出身で、養子に海軍中将の有馬寛がいます。

生い立ちと海軍入隊

1861年、紀州藩の藩医である有馬元函の長男として生まれました。父が幕府軍として戦ったため、幼少期には朝敵として扱われ、小学校への入学が12歳まで遅れるという苦労を経験しました。

旧制三田英学校を経て海軍兵学校に入校。入校時の成績は44名中16位、卒業時は19名中16位と、必ずしも上位ではありませんでしたが、その後の活躍は目覚ましいものがありました。

海軍軍人としての活躍

有馬の経歴で特筆すべきは、明治天皇と東郷平八郎との深い関わりです。日清戦争では、東郷が艦長を務める防護巡洋艦「浪速」の航海長として従軍しました。東郷の側近として、東郷の葬儀委員長も務めましたが、政治的には一貫して無色の態度を貫きました。

日露戦争では、連合艦隊参謀として旅順港閉塞作戦を立案し、自らも指揮官として参加。この功績から、海軍の後輩たちから厚い信頼を得ました。その後、参謀職を離れ、「音羽」艦長として日本海海戦を戦い抜きました。

また、大正初期のシーメンス事件では、海軍大臣から査問委員を依頼され、公正な判断を下しました。条約派と艦隊派の対立が激化した際も、艦隊派から担ぎ出されそうになりましたが、「軍人が政治に介入すべきではない」と拒否しました。ただし、彼が理事長を務めていた海軍予備役士官の団体は、軍縮会議に反対していました。

明治神宮宮司として

晩年は、明治天皇の侍従武官を務めた経歴から、明治神宮の宮司を務めました。1944年5月1日、東京で亡くなりました。

人物像

幼少期から苦労を重ねたため、私生活は非常に清貧でした。また、明治、大正、昭和の各天皇からの信任が厚かったことでも知られています。

年譜

1861年（文久元年）：紀伊国和歌山城下で生まれる。
1873年（明治6年）：広瀬尋常小学校入学。
1876年（明治9年）：広瀬尋常小学校卒業、同志社英学校自修舎入学。
1881年（明治14年）：三田英学校入学。
1882年（明治15年）：海軍兵学校入校。
1885年（明治18年）：砲艦「筑波」乗組。
1886年（明治19年）：練習艦で遠洋航海。
1886年（明治19年）：海軍兵学校卒業、海軍少尉候補生。
1888年（明治21年）：海軍少尉、巡洋艦分隊士。
1889年（明治22年）：砲艦「天城」航海長心得。
1890年（明治23年）：巡洋艦「千代田」回航委員。
1891年（明治24年）：イギリス出発、帰国後「千代田」航海長心得。
1891年（明治24年）：海軍大尉、「千代田」航海長。
1894年（明治27年）：巡洋艦「浪速」航海長。
1895年（明治28年）：横須賀鎮守府参謀。
1896年（明治29年）：侍従武官。
1897年（明治30年）：海軍少佐。
1899年（明治32年）：海軍中佐、常備艦隊参謀。
1900年（明治33年）：戦艦「三笠」回航委員。
1901年（明治34年）：戦艦「三笠」航海長。
1902年（明治35年）：イギリス出発、帰国。
1903年（明治36年）：装甲巡洋艦「常磐」副長、常備艦隊参謀。
1904年（明治37年）：大本営附、横須賀海軍工廠艤装委員、巡洋艦「音羽」艦長、海軍大佐。
1905年（明治38年）：巡洋艦「笠置」艦長。
1906年（明治39年）：竹敷要港部参謀長、装甲巡洋艦「磐手」艦長。
1907年（明治40年）：第二艦隊参謀長。
1908年（明治41年）：大韓帝国、大清帝国皇帝謁見。
1908年（明治41年）：海軍砲術学校長。
1909年（明治42年）：海軍少将。
1910年（明治43年）：海軍省軍令部第1班長。
1912年（大正元年）：明治天皇霊柩供奉、第一艦隊司令官。
1913年（大正2年）：佐世保海軍病院入院、待命、海軍中将。
1914年（大正3年）：海軍将官会議議員、シーメンス事件査問委員、海軍兵学校校長。
1916年（大正5年）：海軍教育本部長兼海軍将官会議議員。
1917年（大正6年）：第三艦隊司令長官。
1918年（大正7年）：海軍将官会議議員、海軍省軍令部次長代理。
1919年（大正8年）：海軍大将、海軍教育本部長兼海軍将官会議議員。
1920年（大正9年）：免 海軍省教育本部長。
1921年（大正10年）：待命。
1922年（大正11年）：予備役編入。
1927年（昭和2年）：海軍有終会理事長。
1931年（昭和6年）：明治神宮宮司、退役編入。
1932年（昭和7年）：枢密顧問官。
1934年（昭和9年）：元帥東郷平八郎海軍大将葬儀委員長。
1937年（昭和12年）：国民精神総動員中央連盟会長。
1939年（昭和14年）：大日本青年団長、議定官。
1940年（昭和15年）：特旨を以って宮中杖差許。
1942年（昭和17年）：昭和天皇・香淳皇后に『明治天皇を偲び奉る』談話を言上。
1943年（昭和18年）：免 明治神宮宮司。
1944年（昭和19年）：死去。

栄典

位階：正二位
勲章：旭日桐花大綬章、勲一等瑞宝章、功三級金鵄勲章など多数
外国勲章：大満洲国建国功労章、勲一位景雲章など

参考文献

有馬良橘伝（佐藤栄祐編・有終会刊）
三田の政官界人列伝 士官教育に傾倒（野村英一編・慶應義塾大学出版会）
坂の上の雲（司馬遼太郎著・文藝春秋）
半藤一利 他『歴代海軍大将全覧』（Amazon Kindle）中央公論新社
日本陸海軍の制度・組織・人事（日本近代史料研究会編・東京大学出版会）
海軍兵学校沿革・第1巻（海軍兵学校刊）
海軍兵学校出身者名簿（小野崎 誠編・海軍兵学校出身者名簿作成委員会）

関連項目

大日本帝国海軍軍人一覧
和歌山県出身の人物一覧

外部リンク

* 有馬良橘 - 用語検索 | 明治神宮 歴史データベース

有馬良橘は、激動の時代を海軍軍人として、そして神職として生きた人物です。その生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせないものと言えるでしょう。

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