折田要蔵

折田要蔵：幕末を駆け抜けた薩摩藩士、砲術家、そして湊川神社初代宮司

折田要蔵（おりた ようぞう）は、幕末の薩摩藩に生を受け、激動の時代を多彩な才能で駆け抜けた人物です。砲術家としての卓越した知識と実践力に加え、湊川神社の初代宮司としてもその名を歴史に刻んでいます。

若き日の研鑽と西洋兵学への傾倒

折田要蔵は、祖父である田中玄淵の薫陶を受け、学問への素養を育みました。天保10年（1839年）には造士館に入学し、その才能を開花させます。弘化2年（1845年）には江戸へ遊学し、昌平黌で学びを深めました。この遊学中に、藤田東湖や箕作阮甫といった蘭学者との出会いが、彼の人生を大きく変えることになります。箕作阮甫から蘭学、特に西洋兵学を学んだことで、彼は当時の最先端技術であった西洋の軍事技術に精通していきました。

嘉永元年（1848年）には、蝦夷地・樺太に渡り、その見聞を広げました。異文化に触れ、国際的な視野を養うとともに、国防の重要性を認識したと考えられます。

黒船来航と国防への貢献

嘉永6年（1853年）の黒船来航は、日本の開国を促すと同時に、国防の危機を露呈させました。折田要蔵は、この事態に危機感を抱き、水夫や鍛冶師に変装して蒸気船や大砲を視察し、西洋の軍事技術を詳細に調査しました。安政2年（1855年）には、徳川斉昭の求めに応じて軍艦や海防について論じ、その知識と見識の深さで斉昭を感嘆させました。

しかし、同年には志士を糾合する謀略が明るみに出たため、江戸町奉行に捕らえられ、薩摩へ送還されるという苦難も経験しました。

薩英戦争での活躍と台場造営

文久3年（1863年）に勃発した薩英戦争において、折田要蔵は砲術家としての才能を遺憾なく発揮しました。彼は砲台の建造と大砲製造の主事を務め、薩摩藩の防衛に大きく貢献しました。同年、島津久光の上京に従軍し、その才能を認められます。元治元年（1864年）には、島津久光の命を受け、摂津沖の防備のための湾岸防備設備を設計し、久光に献策しました。この献策を受けた幕府から台場造営を命じられ、100人扶持を与えられました。この台場造営には、後に実業家として名を馳せる渋沢栄一が一時期内弟子として参加し、内偵を行っていたというエピソードも残っています。

また、折田要蔵は久光に建言し、楠木正成ら南朝の忠臣を顕彰するため、湊川の戦いの跡地に英霊を祀ることを上奏させました。これは、後の湊川神社の創建へと繋がります。

維新後の活動と湊川神社創建

慶応4年（1868年）には、山陰道鎮撫総督参謀書記として山陰道を西進し、生野代官所を攻略。府中裁判所判事を務めた後、明治3年（1870年）に官を辞し、三国屋要七と名を変えて京都で武器商人に転身しました。

明治6年（1873年）、長年の宿願であった湊川神社の初代宮司に任じられ、その創建に尽力しました。明治10年（1877年）には廣田神社宮司への転任を命じられますが、これを辞退し、引き続き湊川神社の宮司を務めました。明治30年（1897年）、湊川菊水文庫の官舎でその生涯を閉じました。

人物評

折田要蔵は、西洋兵学に通じた知識人であると同時に、実践的な能力も兼ね備えた人物でした。国防への強い意識を持ち、幕末の動乱期において、薩摩藩のために尽力しました。また、湊川神社の創建に尽力するなど、文化的な貢献も忘れてはなりません。彼の生涯は、幕末維新期の日本の変革を象徴するものと言えるでしょう。

メディアへの登場

• - テレビドラマ

- 『青天を衝け』（2021年、NHK大河ドラマ） - 演：徳井優

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