新国史

新国史とは

『新国史』は、平安時代中期、10世紀に編纂が試みられた日本の国史です。六[[国史]]の最後を飾る『日本三代実録』の後を受けて編纂が開始されましたが、完成には至らず、草稿のまま終わったとされています。一説には、『続三代実録』と呼ばれていたとも伝えられています。

編纂の中心人物は、藤原実頼と大江朝綱らです。彼らは、宇多天皇と醍醐天皇の二代にわたる出来事を記録しようと試みました。しかし、編纂事業は困難を極め、最終的には未完に終わってしまいました。

編纂の経緯

『新国史』の編纂事業は、朱雀天皇の承平6年（936年）に、撰国史所という機関が設けられたことから始まりました。藤原恒佐と平伊望が別当に任じられ、大江朝綱らが補佐役を務めました。

しかし、作業はなかなか進展せず、村上天皇の天暦8年（954年）には、時の最高実力者であった藤原実頼が総裁に任命され、大江朝綱が別当として再編されました。さらに、朱雀天皇時代の出来事も追加で編纂することが命じられ、作業の促進が図られました。

ところが、天暦11年（957年）に大江朝綱が亡くなり、大江維時が後任の別当に就任した頃から、律令制の弛緩とともに、朝廷内での正史編纂への関心が薄れていったようです。安和2年（969年）を最後に、『新国史』に関する活動の記録は見られなくなり、完成したという記録も存在しないため、未完のまま終わったと考えられています。

草稿の存在

『新国史』は未完に終わったものの、草稿は存在していたようです。ある程度の写本も存在し、一条天皇の寛弘7年（1010年）頃には、天皇や藤原道長が編纂事業の再開を検討したという記録（『権記』や『御堂関白記』など）が残っています。しかし、一条天皇の崩御により、再開は実現しませんでした。

また、藤原通憲（信西）が作成した図書目録などによると、『新国史』には40巻本と50巻本の二種類が存在していたことがわかります。このうち、50巻本は特に『続三代実録』と呼ばれていたことから、伴信友以来、宇多・醍醐両天皇の時代を記したのが40巻で、残りの10巻で朱雀天皇の時代を追加したため、『続三代実録』と呼ばれたという説が有力です。

後世への影響

平安時代には草稿が残っていたようですが、その後完全に散逸し、現在では『中右記』などにその一部が引用されている程度しか確認できません。

しかし、『新国史』の草稿は、『日本紀略』の執筆の際に、原典の一部として利用されたと考えられています。また、『栄花物語』の著者とされる赤染衛門の嫁ぎ先である大江氏と『新国史』との関係から、物語の内容に影響を与えた可能性も指摘されています。

このように、『新国史』は、編纂途中で終わってしまいましたが、その草稿は後世の歴史研究や文学作品に少なからず影響を与えたと考えられます。

もう一度検索