大江維時
大江維時（おおえ の これとき）は、平安時代前期から中期にかけて活躍した公卿であり、卓越した才能を持つ学者でした。伊予権守・大江千古の三男として生まれ、大江氏の血筋を受け継ぎながら、外祖父には祖父大江音人の門弟であった巨勢文雄を持つという、学問の才能が開花するべくして生まれたような家系でした。
維時は、その才能を早くから発揮し、醍醐天皇の時代、29歳で文章生に補せられました。これは当時の他の例と比較すると遅いものの、翌年には文章得業生となり、その選抜の早さから見ても、彼の抜きん出た才能が窺えます。その後、六位蔵人として朝廷に仕えながら、侍読も務めました。延長6年（928年）には蔵人としての功績が認められ従五位下に叙爵、大学助に任じられています。その後も、文章博士、式部少輔、大学頭と学者としての官職を歴任し、順調に昇進を重ねました。
天慶7年（944年）には式部大輔に任ぜられるとともに、春宮・成明親王（後の村上天皇）の東宮学士を兼任します。天慶9年（946年）成明親王が即位すると、維時は学士としての功労により二階昇進し正四位下に叙せられました。天暦4年（950年）には参議に任ぜられ、祖父の大江音人以来約70年ぶりに大江氏から公卿となりました。議政官を務める傍ら、式部権大輔も兼帯し、天暦9年（955年）には従三位に叙せられました。また、天徳元年（957年）には撰国史所別当となり、『新国史』の編纂にも参画しました。天徳4年（960年）には73歳で中納言に昇進し、その晩年まで朝廷に貢献しました。
維時は、文学、兵法にも才能を発揮し、学士として仕えた成明親王の命により、前代の人々の漢詩を集めた『日観集』や中国の漢詩を集めた『千載佳句』を編纂しました。また、唐に留学して兵法『三略』を学び、それを『訓閲集』という120巻の書物にまとめました。さらに、日本最古の兵書といわれる『闘戦経』の作者であるとも言われています。
その記憶力は抜群で、平安京遷都以降の人物の死没年や屋敷の移り変わりなどを把握していたと伝えられています。従兄弟の大江朝綱とはライバル関係にありましたが、維時の子孫である大江匡房が著した『江談抄』では、「維時は才学においては朝綱よりも優れていたが、文章においては朝綱の敵ではなかった」と評されています。実際に、『本朝文粋』に採録された当時の執政・藤原忠平の文書の草案は全て朝綱によるものであり、維時の手による文書は存在しません。
村上天皇の時代には、内裏の屏風を飾る漢詩を大江朝綱・橘直幹・菅原文時の3人に作らせ、維時に選定させたという逸話があります。この時、菅原文時が書いた詩に対し、維時はその内容を酷評し、文時はその屈辱を死の間際まで恨んだと言われています。
維時は、応和3年（963年）6月7日に76歳で亡くなりました。最終官位は中納言従三位でしたが、醍醐天皇、朱雀天皇、村上天皇の三代にわたる侍読としての功績を称えられ、従二位を追贈されました。
大江維時は、その生涯を通して学問に励み、朝廷に貢献した人物であり、その功績は後世にまで語り継がれています。彼の博識ぶりと、文学、兵法における才能は、平安時代の文化を語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
官歴
延喜16年（916年） 秋：文章生
延喜17年（917年） 日付不詳：秀才
延喜18年（918年） 正月：美濃大掾
延喜21年（921年） 6月20日：六位蔵人、文章得業生美濃大掾如元
延喜22年（922年） 正月30日：近江権少掾
延長2年（924年） 2月1日：式部少丞
延長3年（925年） 正月：式部大丞
延長6年（928年） 正月7日：従五位下（蔵人労）、正月19日：昇殿、正月29日：大学助
延長7年（929年） 9月23日：兼文章博士
延長9年（931年） 3月12日：兼備後介、7月3日：昇殿
承平3年（933年） 10月24日：兼紀伊権守
承平4年（934年） 正月7日：従五位上
承平5年（935年） 12月17日：兼式部少輔
天慶2年（939年） 正月7日：正五位下、2月2日：兼大学頭
天慶4年（941年） 正月7日：従四位下、2月9日：昇殿、3月28日：兼三河権守
天慶5年（942年） 3月29日：兼備前守
天慶7年（944年） 3月29日：式部大輔、4月22日：兼東宮学士（春宮・成明親王）
天慶9年（946年） 4月21日：昇殿、4月28日：正四位下（前坊学士労）、7月17日：兼左京権大夫、9月16日：改左京大夫
天暦元年（947年） 6月6日：兼美濃守
天暦4年（950年） 2月1日：参議、止大輔
天暦5年（951年） 正月30日：兼近江守、5月22日：兼式部権大輔
天暦9年（955年） 2月7日：従三位
天暦10年（956年） 正月27日：兼伊予権守
天徳2年（958年） 正月30日：止大輔（男斉光申任丞也）
天徳4年（960年） 8月22日：中納言、9月16日：昇殿
応和3年（963年） 6月7日：薨去（中納言従三位）、有勅贈従二位（依三代侍講也）
維時は、その才能を早くから発揮し、醍醐天皇の時代、29歳で文章生に補せられました。これは当時の他の例と比較すると遅いものの、翌年には文章得業生となり、その選抜の早さから見ても、彼の抜きん出た才能が窺えます。その後、六位蔵人として朝廷に仕えながら、侍読も務めました。延長6年（928年）には蔵人としての功績が認められ従五位下に叙爵、大学助に任じられています。その後も、文章博士、式部少輔、大学頭と学者としての官職を歴任し、順調に昇進を重ねました。
天慶7年（944年）には式部大輔に任ぜられるとともに、春宮・成明親王（後の村上天皇）の東宮学士を兼任します。天慶9年（946年）成明親王が即位すると、維時は学士としての功労により二階昇進し正四位下に叙せられました。天暦4年（950年）には参議に任ぜられ、祖父の大江音人以来約70年ぶりに大江氏から公卿となりました。議政官を務める傍ら、式部権大輔も兼帯し、天暦9年（955年）には従三位に叙せられました。また、天徳元年（957年）には撰国史所別当となり、『新国史』の編纂にも参画しました。天徳4年（960年）には73歳で中納言に昇進し、その晩年まで朝廷に貢献しました。
維時は、文学、兵法にも才能を発揮し、学士として仕えた成明親王の命により、前代の人々の漢詩を集めた『日観集』や中国の漢詩を集めた『千載佳句』を編纂しました。また、唐に留学して兵法『三略』を学び、それを『訓閲集』という120巻の書物にまとめました。さらに、日本最古の兵書といわれる『闘戦経』の作者であるとも言われています。
その記憶力は抜群で、平安京遷都以降の人物の死没年や屋敷の移り変わりなどを把握していたと伝えられています。従兄弟の大江朝綱とはライバル関係にありましたが、維時の子孫である大江匡房が著した『江談抄』では、「維時は才学においては朝綱よりも優れていたが、文章においては朝綱の敵ではなかった」と評されています。実際に、『本朝文粋』に採録された当時の執政・藤原忠平の文書の草案は全て朝綱によるものであり、維時の手による文書は存在しません。
村上天皇の時代には、内裏の屏風を飾る漢詩を大江朝綱・橘直幹・菅原文時の3人に作らせ、維時に選定させたという逸話があります。この時、菅原文時が書いた詩に対し、維時はその内容を酷評し、文時はその屈辱を死の間際まで恨んだと言われています。
維時は、応和3年（963年）6月7日に76歳で亡くなりました。最終官位は中納言従三位でしたが、醍醐天皇、朱雀天皇、村上天皇の三代にわたる侍読としての功績を称えられ、従二位を追贈されました。
大江維時は、その生涯を通して学問に励み、朝廷に貢献した人物であり、その功績は後世にまで語り継がれています。彼の博識ぶりと、文学、兵法における才能は、平安時代の文化を語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
官歴
延喜16年（916年） 秋：文章生
延喜17年（917年） 日付不詳：秀才
延喜18年（918年） 正月：美濃大掾
延喜21年（921年） 6月20日：六位蔵人、文章得業生美濃大掾如元
延喜22年（922年） 正月30日：近江権少掾
延長2年（924年） 2月1日：式部少丞
延長3年（925年） 正月：式部大丞
延長6年（928年） 正月7日：従五位下（蔵人労）、正月19日：昇殿、正月29日：大学助
延長7年（929年） 9月23日：兼文章博士
延長9年（931年） 3月12日：兼備後介、7月3日：昇殿
承平3年（933年） 10月24日：兼紀伊権守
承平4年（934年） 正月7日：従五位上
承平5年（935年） 12月17日：兼式部少輔
天慶2年（939年） 正月7日：正五位下、2月2日：兼大学頭
天慶4年（941年） 正月7日：従四位下、2月9日：昇殿、3月28日：兼三河権守
天慶5年（942年） 3月29日：兼備前守
天慶7年（944年） 3月29日：式部大輔、4月22日：兼東宮学士（春宮・成明親王）
天慶9年（946年） 4月21日：昇殿、4月28日：正四位下（前坊学士労）、7月17日：兼左京権大夫、9月16日：改左京大夫
天暦元年（947年） 6月6日：兼美濃守
天暦4年（950年） 2月1日：参議、止大輔
天暦5年（951年） 正月30日：兼近江守、5月22日：兼式部権大輔
天暦9年（955年） 2月7日：従三位
天暦10年（956年） 正月27日：兼伊予権守
天徳2年（958年） 正月30日：止大輔（男斉光申任丞也）
天徳4年（960年） 8月22日：中納言、9月16日：昇殿
応和3年（963年） 6月7日：薨去（中納言従三位）、有勅贈従二位（依三代侍講也）
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