平伊望

平伊望（たいら の これもち）

平伊望は、平安時代前期に活躍した公卿であり、桓武平氏高棟流の流れを汲む人物です。父は中納言の平惟範で、その次男として生まれました。最終的な官位は従三位・大納言にまで昇り、その生涯は朝廷における重要な役職を歴任しました。

武官から公卿へ

伊望の経歴は、武官としてのキャリアから始まりました。醍醐天皇の大嘗会において、中宮・藤原穏子の御給により従五位下に叙爵し、官吏としての道を歩み始めます。その後、尾張権守、中務少輔、勘解由長官などを歴任。兄の時望が弁官としてのキャリアを積んだのに対し、伊望は左衛門佐、左近衛権少将、左近衛少将といった武官の役職を経験しました。この時期の伊望は、武官としての能力を高く評価されていたことが伺えます。

延喜21年（921年）には、兄の時望と同時に従四位下に叙せられ、蔵人頭に任じられます。延長3年（925年）には少将を辞任し、中宮権大夫に遷任。この異動は、伊望が武官から文官、そして公卿へとキャリアを大きく転換させる転機となりました。中宮権大夫として、伊望は15年近くもの長きにわたり、藤原穏子に仕え、その信頼を得ていたと考えられます。延長5年（927年）には参議に任ぜられ、兄に先駆けて公卿の仲間入りを果たしました。

公卿としての活躍

[参議]]となった後も、伊望は議政官として中宮]大夫のほか、民部卿など様々な役職を兼務しました。承平2年（[[932年）には正四位下に昇進。承平4年（934年）には、皇太后・藤原穏子の御賀において、先任の参議であった源清蔭や橘公頼を越えて正四位上に叙せられ、12月には従三位・中納言へと昇進を遂げました。これは、伊望が朝廷内で非常に高い評価を得ていたことの証左と言えるでしょう。

また、承平6年（936年）には、新国史編纂のために設置された撰国史所の別当に藤原恒佐とともに任ぜられました。このことからも、伊望が単なる武人ではなく、文化的な事業にも貢献できる人物であったことが分かります。

天慶元年（938年）には、右大臣・藤原恒佐と大納言・藤原扶幹が相次いで死去したことを受け、伊望は大納言へと昇進。これは、当時の太政官において、藤原北家嫡流の藤原忠平・仲平兄弟に次ぐ第三位の席次を占めるという、非常に重要な地位でした。

伊望は天慶2年（939年）11月16日に59歳でこの世を去りましたが、その生涯は武官から公卿へ、そして国史編纂にも携わるなど、多岐にわたる活躍を見せました。最終的な官位は大納言従三位民部卿中宮大夫でした。

官歴

以下に、『公卿補任』に記載された伊望の官歴をまとめます。

寛平9年（897年） 正月20日：聴雑袍（下弾正宣旨）。11月23日：従五位下（中宮御給大嘗会、元宮殿上人）
昌泰3年（900年） 5月15日：尾張権守
延喜5年（905年） 4月5日：中務少輔
延喜9年（909年） 正月17日：従五位上
延喜11年（911年） 2月15日：兼勘解由長官
延喜13年（913年） 4月15日：兼右兵衛佐
延喜16年（916年） 3月20日：左衛門佐。9月23日：昇殿
延喜17年（917年） 5月20日：左近衛権少将。11月17日：正五位下（朔旦冬至）
延喜18年（918年） 正月12日：兼讃岐権介（使宣旨）
延喜19年（919年） 正月28日：左近衛少将
延喜21年（921年） 正月7日：従四位下。正月30日：兼春宮亮（春宮・保明親王）。2月7日：昇殿。3月8日：蔵人頭
延喜22年（922年） 正月30日：兼讃岐守
延長元年（923年） 3月21日：止春宮亮（保明親王薨）。6月26日：兼式部権大輔、少将如元
延長3年（925年） 正月30日：兼中宮権大夫（中宮・藤原穏子）、止少将
延長5年（927年） 正月12日：参議、中宮権大夫式部権大輔如元
延長6年（928年） 正月7日：従四位上。正月29日：兼越前権守。6月9日：兼式部大輔
延長8年（930年） 正月29日：兼備前守。日付不詳：兼中宮大夫
承平元年（931年） 11月28日：兼皇太后宮大夫（皇太后・藤原穏子）
承平2年（932年） 正月7日：正四位下。8月30日：兼民部卿
承平3年（933年） 10月24日：兼伊予守
承平4年（934年） 3月28日：正四位上（皇太后御賀、越二人）。12月21日：中納言、従三位、民部卿皇太后宮大夫如元
承平6年（936年） 日付不詳：撰国史所別当
天慶元年（938年） 6月23日：大納言、民部卿中宮大夫如元
天慶2年（939年） 11月16日：薨去（大納言従三位民部卿中宮大夫）

系譜

父：平惟範
母：人康親王娘
妻：不詳
生母不明の子女
男子：平統理
男子：平善理
男子：平実望

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年

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