新橋 (花街)

新橋花街の歴史と文化

新橋は、現在の東京都中央区銀座に位置する花街で、その歴史と格式の高さから「芸の新橋」として、全国の花柳界からも一目置かれる存在です。この花街の歴史は、安政4年（1857年）に現在の銀座八丁目付近で、三味線の師匠が始めた料理茶屋に遡るとされています。当初、新橋の芸者は、能楽太夫の名前にちなんで「金春芸者」と呼ばれ、金春新道沿いには粋な家屋が立ち並んでいました。

新橋花街の成立と発展

新橋界隈は、各藩の大名屋敷からも近いという地理的な利点から、公儀の役人や他藩の客人をもてなす接待・外交の場として利用されるようになりました。宴席では、座興として芸事が披露され、その中で女師匠たちが座敷に招かれ芸を披露していました。その中の一人、常磐津文字和佐が、当時の老中であった太田資始に、芸を披露するだけでなく、客への酌や給仕も許可されるように願い出たことが、新橋芸者のスタイルが確立するきっかけとなりました。武士たちは、贔屓の芸者に料亭選びから宴会の裁量を任せることもあり、芸者は敬意の対象となりました。

明治時代に入ると、新橋は江戸時代からの花街である柳橋と並び、「柳新二橋」と称されるほどの人気花街となりました。新橋が新政府高官に愛された背景には、東京の花柳界において新興勢力であったことが挙げられます。伊藤博文や板垣退助など、多くの著名人が新橋に集い、当時、板垣に落籍された小清のような名妓もいました。

大正から昭和へ、そして現代

大正時代に入ると、新橋の花街は芸妓の技芸向上に力を入れました。大正14年（1925年）には、新橋演舞場の杮落とし公演として『東をどり』が初演され、中村喜春、まり千代など多くの名妓を輩出しました。昭和中期には最盛期を迎え、約400名の芸妓が活躍していましたが、高度経済成長期や石油ショックの影響を受け、料亭や芸妓の数は減少しました。2007年（平成19年）時点では、料亭12軒、芸妓70名となっていますが、同年には「新橋芸者発祥150周年」を祝うイベントが開催されました。

新橋と烏森

現在、港区新橋には「新橋南地」（通称「烏森」）という花街が存在していましたが、元々は本項の「新橋」と一緒のエリアでした。その後、分離し、現在は存在しません。

新橋の主な料亭

現在も営業を続ける新橋の料亭には、以下のような店があります。

金田中 - 銀座七丁目18番17号
新喜楽 - 築地四丁目6番7号
松山 - 銀座七丁目16番18号
米村 - 銀座七丁目17番18号
わのふ - 築地四丁目2番10号

新橋の文化と影響

新橋は、単なる花街としてだけでなく、日本の文化や芸能にも大きな影響を与えてきました。特に、新橋芸者の高い技能は、他の花街からも尊敬を集めています。

新橋の文化は、多くの芸術作品にも影響を与えており、三島由紀夫の『橋づくし』などにも、その様子が描かれています。

まとめ

新橋は、歴史と伝統を誇る花街であり、その文化は現代にも受け継がれています。時代の変化と共に、料亭や芸妓の数は減少していますが、新橋の持つ独特の魅力は、今もなお多くの人々を惹きつけています。

参考文献

小川一眞『東京風景』、小川写真製版所、1911年4月27日発行
戸川残花（戸川安宅）『江戸史蹟』、内外出版協会、1912年
浅原須美『東京六花街 芸者さんから教わる和のこころ』、ダイヤモンド社、2007年6月29日 ISBN 4478077894
上村敏彦『東京 花街・粋な街』、街と暮らし社、2008年9月 ISBN 4901317199
三島由紀夫『橋づくし』、新潮文庫『花ざかりの森・憂国』所収、新潮社、1968年9月 ISBN 4101050023
* 岩下尚史『芸者論 花柳界の記憶』、文春文庫、文藝春秋、2009年7月10日 ISBN 4167753928

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