新韓党

新韓党：韓国保守勢力の転換点

1960年代半ば、韓国の政治風景は激動の時期を迎えていました。1965年6月、日韓基本条約の締結は、韓国社会に大きな衝撃を与えました。この条約批准に反発した勢力は、既存の政治体制に揺さぶりをかける動きを見せ始めます。その中心となったのが、新韓党です。

新韓党は、第三共和国時代の主要政党であった民衆党内の改憲派によって結成されました。民衆党は尹潽善を代表とするグループと、異なる政治路線を歩むグループが混在する複雑な内部構造を持っていました。日韓基本条約批准を巡る対立は、こうした内部対立を決定的に露呈させ、党内強硬派による離党という事態を招きました。

離党した強硬派は、「鮮明野党」を掲げ、1966年2月15日、新韓党を結成します。尹潽善を首席代表に、張沢相を顧問、金度演と鄭一亨を代表委員に迎えるなど、党の顔ぶれは、韓国政界におけるベテラン勢揃いでした。3月30日には創立大会を開催し、尹潽善を党総裁及び次期大統領候補に指名。明確な党勢拡大を目指しました。

新韓党の結成は、当時の与党であった民主共和党（共和党）に対する明確な挑戦でした。新韓党は、政権交代を至上目標に掲げ、共和党政権の非道を糾弾する集会を全国各地で開催するなど、激しい闘争を展開しました。その活動は、当時の韓国社会に大きな反響を呼び、大きな存在感を示しました。

しかし、新韓党の活動は長くは続きませんでした。1967年の大統領選挙を控え、野党勢力の統一候補擁立が強く求められるようになりました。この動きの中で、新韓党は、民衆党の大統領候補である兪鎮午氏の候補辞退を条件に、民衆党との統合に合意します。そして、1967年2月、新民党が結成されると、新韓党は自動的に解体されました。

新韓党の活動期間は短かったものの、その存在は韓国政治史において無視できないものです。日韓基本条約という歴史的転換期に、既存の政治体制に異議を唱え、新たな政治勢力の形成を目指した新韓党の行動は、後の韓国政治の展開に影響を与えたと言えるでしょう。新韓党の活動は、韓国の政党政治が、いかに流動的で、変化に富んでいるかを示す好例となっています。また、彼らの活動は、現代韓国政治における保守勢力の複雑な歴史を理解する上で重要な要素です。新韓党の短い歴史は、激しい政治闘争と、妥協と合従連衡の繰り返しを通して、韓国民主主義の歩みを象徴的に示していると言えるでしょう。

(参考文献：韓国史編纂委員会　金容権編著『朝鮮韓国近現代史事典』日本評論社)

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