方震孺

方震孺（ほう しんじゅ）

方震孺（1585年 - 1645年）は、明末の官僚であり、字を孩未と称しました。本貫は安慶府桐城県にあり、後に寿州に移り住みました。

生涯

1613年（万暦41年）に進士に及第し、官僚としての道を歩み始めました。沙県知県を務めた後、中央に召還され御史に任じられました。

1620年（泰昌元年）、天啓帝が即位すると、宦官の魏忠賢が権力を掌握し、客氏と結託して政治を壟断しました。これに対し、方震孺は三度にわたって上疏し、朝廷の危機を訴えました。翌1621年（天啓元年）には「抜本塞源論」を上呈し、梃撃の案に関連して排斥された王之寀、陸大受、張庭、李俸らや、東林党として排除された趙南星、高攀龍、劉宗周らの復権を求めました。また、宦官が皇帝の命を歪曲して伝えている現状を批判しました。この年、南城を巡視した際、宦官の張曄と劉朝が訴えられ、魏忠賢が彼らを庇おうとしたものの、方震孺はこれを受け入れず、皇帝に直接報告しました。この出来事により、魏忠賢は方震孺を深く恨むようになりました。

遼陽が後金の攻撃により陥落すると、方震孺は1日に13回も上疏し、巡撫の増員、海運の活用、辺境の兵備強化、軍官の交代を求めました。当時、東北に向かおうとする官僚がいない中で、方震孺は自ら軍を慰問することを申し出ました。天啓帝は国庫から20万両を出し、方震孺に軍の慰問を命じました。6月、方震孺が関外に赴き、将兵を慰労し、戦死者を弔い、負傷者を救済しました。これにより、軍民は喜びました。また、三岔河を防衛線とすることの不備を指摘し、退いて守るよりも進んで守るべきだと主張しました。その後、方震孺は遼東巡按に任命され、監紀軍事を務めました。

1622年（天啓2年）、後金の軍が再び三岔河を渡って侵攻しました。先鋒の孫得功は戦わずに鎮武で「兵敗れたり」と叫んで逃亡しました。巡撫の王化貞も広寧から逃走しました。明軍の前線の諸城はこれを聞いて次々と撤退しましたが、方震孺だけは前屯に留まりました。当時、西平堡の守将である羅一貫が戦死し、参将の祖大寿が残兵を率いて覚華島に駐屯していました。方震孺は水軍の将軍である張国卿と協議し、覚華島の軍民と食糧を回収することにしました。方震孺は張国卿とともに航海し、祖大寿と合流して、軍民の物資を回収して帰還しました。

しかし、方震孺は魏忠賢一派の徐大化によって弾劾されました。都御史の鄒元標が方震孺の東北での功績を弁護しましたが、給事中の郭興治が鄒元標を弾劾して追放しました。鄒元標が官を去ると、方震孺もまた罷免されて帰郷しました。1625年（天啓5年）、魏忠賢と魏広微が東林党弾圧の大獄を引き起こすと、方震孺を弾劾する動きが起こりました。郭興治は、方震孺が河西で不正に財産を隠匿していると非難しました。方震孺は逮捕され、拷問を受けました。不正な財産6000両あまりを隠匿した罪で絞首刑が宣告されました。さらに、揚州府知府の劉鐸が呪詛を行ったとして誣告されると、方震孺もこれに関与していたとされ、死刑囚として獄につながれました。

1627年（天啓7年）、崇禎帝が即位し、魏忠賢が処刑されると、方震孺は釈放されて帰郷しました。1635年（崇禎8年）春、張献忠が寿州を攻撃した際、寿州の長吏が交代したばかりだったため、方震孺は士民を率いて城を守り、反乱軍は寿州に近づくことができませんでした。巡撫の史可法がこの功績を上奏したため、方震孺は広西参議に任用されました。1643年（崇禎16年）には右僉都御史に抜擢され、広西巡撫を務めました。1644年（崇禎17年）、北京が陥落し、福王朱由崧が南京で即位すると、方震孺はすぐに拝謁して勤王の上疏を行いました。しかし、馬士英と阮大鋮は方震孺を恐れて、広西に帰還するよう命じました。方震孺は失意のうちに亡くなりました。享年61歳でした。

方震孺は、激動の時代にあって、常に国を思い、不正を憎み、困難に立ち向かった人物でした。その生涯は、明末の動乱を象徴するものであり、多くの人々に影響を与えました。

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