日本の悲劇 (1946年の映画)

『自由の声 日本の悲劇』は、日本映画社が1946年に製作したドキュメンタリー映画です。この作品は、単なる記録映像ではなく、モンタージュ理論を駆使して、過去の日本の姿を批判的に描き出した点で特筆されます。

映画の概要

映画のサブタイトルには「日本映画社・映画時評」とあり、通し番号は「No.230」と記されています。監督は、モンタージュ理論の本場であるソ連のレニングラード映画技術専門学校で学んだ亀井文夫です。彼は、既存のニュースフィルムを再編集（モンタージュ）することで、戦時中の日本の侵略的な歴史を批判的に叙述しました。映画のラストシーンでは、軍服姿の昭和天皇が背広姿へと変わっていく場面が挿入されています。この演出は、戦後の日本の変化を象徴的に表していると解釈できます。解説は丸山章治が担当しました。

上映禁止の経緯

この映画は、当初GHQの検閲を通過し、公開されました。しかし、公開後わずか1週間で、吉田茂首相の圧力により、再検閲が行われ、フィルムは没収、上映禁止となってしまいます。この決定には、吉田首相だけでなく、GHQ参謀第2部（G2）部長のチャールズ・ウィロビーも関与していたとされています。ウィロビーは、試写会でこの映画を見て激怒したと伝えられています。この出来事は、当時の占領下の日本における政治的、文化的な検閲の実態を浮き彫りにするものです。

その後の影響

現在では、この映画はDVD化され、鑑賞が可能になっています。当時のニュース・短編専門館の支配人によれば、民間情報教育局（CIE）と民間検閲支隊（CCD）の間で「派閥抗争」があり、それが上映禁止の背景にあったとも指摘されています。平野共余子の著書『天皇と接吻』には、亀井文夫ら関係者へのインタビューを基に、上映禁止に至る詳細な経緯が記されています。また、坂手洋二は、この平野の著書を基に戯曲『天皇と接吻』を創作し、『日本の悲劇』の上映禁止の経緯を劇化しました。この舞台は好評を博し、坂手は2000年度読売演劇大賞・最優秀演出家賞を受賞しました。坂手の戯曲は、カモミール社から2001年に出版され、平野共余子自身も解説を寄稿しています。

関連情報

映画の企画には、民間情報教育局映画演劇課長のデヴィッド・コンデとセオドア・コーエンが関与しています。コンデは、上映禁止後に更迭されています。この映画は、占領下の日本の言論状況を考える上で、重要な資料と言えるでしょう。

参考文献

平野共余子『天皇と接吻』（草思社、1998年）
松浦総三「チャンバラ追放と日本映画の朝」『占領下の言論弾圧』現代ジャーナリズム出版会、1969年、157 - 173頁。

関連項目

日本の悲劇 (1953年の映画)
日本の悲劇 (2012年の映画)
デヴィッド・コンデ
セオドア・コーエン

外部リンク

日本の悲劇 - allcinema
日本の悲劇 - IMDb（英語）

この映画は、単なるドキュメンタリー映画としてだけでなく、歴史的な出来事を背景とした、複雑な政治的、文化的背景を持つ作品として、今もなお重要な意味を持っています。

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