日本及日本人

『日本及日本人』は、1907年から1945年まで政教社から出版された言論雑誌です。三宅雪嶺が主宰し、国粋主義的な論陣を張りました。

歴史的背景

本誌は、政教社の『日本人』と陸羯南の『日本新聞』を継承する形で創刊されました。1906年、『日本新聞』の運営を巡る騒動から政教社へ社員が移籍し、三宅雪嶺が両誌の精神を受け継ぎ、誌名を『日本及日本人』と改めました。

三宅雪嶺は、西洋思想に通じながらも、日本の独自性を重視する国粋主義者でした。彼の主筆時代が、本誌の最盛期と言えるでしょう。雪嶺は題言と主論説を担当し、国分青崖が漢詩による時評を、古島一雄が時事評論を、内藤鳴雪が俳句欄を、三井甲之が和歌欄を担当しました。また、河東碧梧桐が選者を務める俳句欄『日本俳句』も設けられました。島田三郎、杉浦重剛、福本日南、南方熊楠など、多くの知識人が執筆陣に名を連ねました。

大正時代に入ると、三井甲之の論説が増え、中野正剛、五百木良三、植原悦二郎、安岡正篤らが寄稿し、右翼的な色彩を帯びるようになります。1920年には、未来予測記事を掲載した春季増刊号『百年後の日本』が発行され、話題を呼びました。

1923年の関東大震災で政教社は被災し、雑誌の継続を巡って三宅雪嶺と他の同人の間で対立が起こり、雪嶺は去ります。その後、政教社が発行を再開しましたが、内容は神秘的な国粋論へと傾斜していきました。五百木良三が社長となると、雑誌は月刊化され、国分青崖、入江種矩、雑賀博愛らが中心となり、戦争協力体制へと移行していきました。

1945年2月、第二次世界大戦の末期に廃刊となりました。

戦後の復刊

1950年9月、『日本及日本人』は復刊を果たし、版元を変えながら2004年まで刊行されました。1988年には「創刊100周年記念」号が発行されています。

『日本及日本人』は、明治から昭和にかけての日本の言論界において、独自の存在感を示した雑誌でした。その変遷は、日本の社会、思想の変化を反映しており、近代日本研究における貴重な資料と言えるでしょう。

もう一度検索