日本基督教団今治教会

日本基督教団今治教会は、愛媛県今治市に位置するプロテスタント教会であり、その歴史は明治初期にまで遡ります。アメリカン・ボードから派遣された宣教師J.L.アッキンソンによってその歩みが始められ、四国地方における重要なキリスト教伝道拠点の一つとして発展してきました。

教会の起源は1876年（明治9年）に遡ります。当時神戸に滞在していたアッキンソンのもとに、松山在住者からキリスト教を学びたいという手紙が届きました。これに応じたアッキンソンは、同年3月28日に松山を訪れ、伝道活動を開始しました。松山での滞在中、偶然にも同じ宿に宿泊していた今治の増田精平がアッキンソンの説教に深く感銘を受け、今治への訪問を熱心に請願したのです。この請願に応じ、アッキンソンは4月8日から今治を訪れ、数日間にわたり宿屋や町会所で伝道集会を行いました。その後、上代知新や中島勝載といった人々も今治での伝道に携わりました。1878年（明治11年）には再びアッキンソン一行が今治を訪れて説教を行い、これに賛同した約40名の人々が「愛隣社」という団体を結成しました。

1879年3月、上代知新が今治に来訪した際に、一時的な礼拝場所として仮会堂が設けられました。さらに、同志社で神学を学び、「熊本バンド」の一員であった横井時雄が今治での伝道活動を行いました。そして、1879年9月21日、アッキソンを議長として横井時雄の按手礼試験が実施され、彼は今治教会の初代牧師に就任しました。この日をもって、正式に今治教会が設立されたのです。設立時には、大倉治衛門、中谷卯三郎、蜂谷徳三郎、矢野万助、渡辺福治、真鍋定造の6名が洗礼を受け、大阪教会から八木治作が転入するなど、最初期の教会形成がなされました。設立後、今治教会は松山、西条、丸亀、宇和島など、周辺地域への伝道にも積極的に取り組みました。

教会施設の整備も進められ、1880年には仮会堂が建設され、翌1881年（明治14年）には恵美須町一丁目に本格的な会堂が完成しました。同年7月3日に行われた会堂の落成式には、同志社を創設した新島襄・八重夫妻も出席しています。その後、今治教会は日本組合基督教会に所属し、地域社会における信仰の中心としての役割を担いました。1909年には会堂の増改築が行われ、施設の充実が図られました。

教会創立50周年を迎えた1929年には記念式典が盛大に開催され、教育者として著名な新渡戸稲造や、社会活動家・作家として知られる賀川豊彦、そして当時の日本組合基督教会重鎮であった海老名弾正といった日本の近代を代表する人物たちが来訪し、講演を行いました。

戦時下の教会統合の流れの中で、今治教会も変化を経験しました。1940年には波止浜教会との合併を行い、1941年には日本基督教団の成立に伴いこれに合流しました。さらに1943年には今治メソヂスト教会との合同も果たしています。しかし、1945年8月6日の今治空襲により、会堂を含む教会施設は惜しくも焼失してしまいました。

戦後の復興期を経て、教会は新たな場所で再建の道を歩みました。1948年には現在の宝来通り沿いの地へ移転し、翌1949年には新しい会堂が完成しました。この会堂の献堂式では、当時の教会指導者であった小崎道雄が記念の講演を行っています。また、社会福祉活動の一環として、1951年には教会付属のめぐみ幼稚園が設立され、地域の子どもたちの育成にも貢献しています。

歴代の牧師としては、初代の横井時雄をはじめ、山中百、露無文治、菅原菊三、中村三郎、亀井政一、椿真六、上野光隆、そして1963年に第9代牧師として着任した榎本保郎などが知られています。また、二宮邦次郎、徳冨蘆花、村井知至といった人々が教会に関係を持ちました。特に、救世軍の指導者となる山室軍平は、救世軍入隊前に約2ヶ月間今治教会で伝道活動を行ったことがあり、経済学者・教育者の矢内原忠雄も1915年の夏季学生大会で演説を行うなど、教会は多くの著名人との交流を持つ場でもありました。今治教会は、その長い歴史の中で様々な困難を乗り越え、地域社会に根差した信仰共同体として現在に至っています。

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