日産ディーゼル・スペースランナーA

スペースランナーA：日産ディーゼルの大型バスの軌跡

スペースランナーAは、日産ディーゼル工業（現UDトラックス）が販売していた10〜12m級の大型バスです。路線バスや自家用バスとして活躍しました。ここでは、U/UA型以降のモデルを中心に、その概要、変遷、技術的特徴、そして三菱ふそうとの提携による終焉までを詳しく解説します。

スペースランナーAの概要

日産ディーゼルは、自社内にバスの車体製造部門を持たなかったため、富士重工業（FHI）または西日本車体工業（NSK）が車体を製造していました。2003年に富士重工業がバス車体製造から撤退してからは、2007年のスペースランナーA発売まで西日本車体工業が独占的に製造を担当しました。スペースランナーAの発売以降は、スペースランナーAのみが三菱ふそうバス製造（MFBM）製となり、その他は従来通り西日本車体工業で製造されました。

このような経緯から、外観が大きく変わっても、それはコーチビルダー側のモデルチェンジであり、車種そのもののフルモデルチェンジとは言いにくい状況でした。型式の変更は、主に排出ガス規制への対応、エンジンの変更、モデルチェンジに合わせた表記変更、エンジン設置方法の変更などによるものでした。

モデルの変遷

U/UA（U/UA系）

1973年に登場したU(A)20系は、日産ディーゼル初のリアアンダーフロアーエンジンバスでした。水平式のPD6H型エンジンを搭載し、U（UA）30系には、PE6H型エンジンが搭載されました。富士重工業製の車体は13型ボディが架装され、西日本車体工業製の車体はカマボコと呼ばれる42MCボディが採用されました。

K-U/UA31・36系

1980年には、昭和54年排出ガス規制に対応するため、U20/30系をマイナーチェンジしたK-U(A)31系が登場しました。U30系に搭載していたPE6H型エンジンの出力を向上させて搭載しました。車体は富士重工がR13系ボディを架装していましたが、1982年にR15系ボディに移行しました。

P-U/UA32系

1984年には、昭和58年排出ガス規制に対応したP-U(A)32系が登場しました。予燃焼室式エンジンは廃止され、直噴式のPE6H型エンジンが搭載されました。1985年には、騒音規制に合わせてマイナーチェンジが行われ、外観では後部のエンジン開口部が廃止されました。

P-U/UA33・50系

1988年には、P-U(A)32系がP-U(A)33系となりました。新型のPF6H型エンジンを搭載し、機械式ATのE-MATICが設定されました。高出力版のP-UA50系も設定され、V8エンジンを搭載し、サスペンションはエアサスのみとなりました。

UA（UA系）

1990年に平成元年排出ガス規制に対応したU-UA440系が登場し、型式の表記方法が変更されました。V8エンジンを搭載した高出力車もモデルチェンジされ、U-UA510系、U-UA520系が登場しました。

KC-UA460・521A系

1995年には、平成6年排出ガス規制に対応したKC-UA460系が登場しました。新型のPG6型エンジンを搭載し、ディーゼル・蓄圧式ハイブリッドバスERIPが登場しました。V8エンジンを搭載した高出力車もモデルチェンジが行われ、KC-UA521A系となりました。

低公害バス

日産ディーゼルは、日本初の市販CNGバスを開発し、CNGバスの普及に貢献しました。1994年にはU-UA440系で試作CNG車を実用化し、1996年にはUA460系をCNG対応させ、量産化を開始しました。

また、蓄圧式ハイブリッド車「ERIP」を開発しました。1994年度にU-UA系を元にERIP試作車が製造され、大阪市交通局へ納入されました。

KL-UA452A系

2000年には、平成11年排出ガス規制に対応したKL-UA452A系が登場しました。エンジンは過給器付きのPF6H系を搭載し、高出力車もエンジン設定で対応しました。

ノンステップバス

1997年には試作ノンステップ車を開発し、1998年に正式発売されました。2003年には富士重工業のバスボディ製造事業撤退により、西日本車体工業製車体に変更されました。

スペースランナーRA（RA系）

2005年には、大型路線バスで初めて新長期規制（平成17年排出ガス規制）に適合したモデルが発売され、ADG-RA273A系となりました。エンジン設置方法が「縦置き横倒し」から「縦置き直立」へと変更されました。

スペースランナーA（AP系）

三菱ふそう・エアロスターのOEM供給車で、三菱ふそうバス製造製です。2007年10月30日に発売されました。エンジンはFLENDSを用いた日デ製のMD92エンジンが用いられています。

三菱ふそうとの相互OEM供給と終焉

2007年から日産ディーゼル工業と三菱ふそうトラック・バスは、バス事業における相互提携を行いました。しかし、2010年10月29日付で、三菱ふそうとの合弁会社設立に向けた協議およびOEM供給の打ち切りが発表されました。

UDトラックスは2011年4月に最終納入分を納入し販売終了。その後輸入バス販売を模索するも断念し、この2011年をもってバス事業から撤退しました。

まとめ

スペースランナーAは、日産ディーゼルの大型バスの歴史を語る上で欠かせない存在です。その変遷は、日本のバス技術の進化と、時代の変化への対応を示すものでした。三菱ふそうとの提携による終焉は、UDトラックスのバス事業の終幕を意味しましたが、その技術と精神は、日本のバス業界に大きな影響を与え続けました。

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