旧長崎大司教館

旧長崎大司教館は、長崎県長崎市南山手町に位置する、県指定の文化財建造物です。この建物は、カトリック長崎司教区（現在のカトリック長崎大司教区）の司教館、すなわち司教の公邸として、1915年（大正4年）に竣工しました。

設計は、パリ外国宣教会の宣教師マルク・マリー・ド・ロと、日本の建築家である鉄川与助が共同で行い、施工は鉄川与助が担当しました。当時、司教座聖堂であった大浦天主堂に隣接して建てられ、その歴史的な背景から、この場所はカトリック教会にとって非常に重要な意味を持っていました。1962年（昭和37年）に司教座聖堂が浦上教会へ移された後も、1989年（平成元年）に新しい大司教館が浦上教会の近くに新築されるまで、この建物は大司教館として使用されました。

特筆すべきは、旧長崎大司教館が、日本におけるカトリック教会の大司教区（東京、大阪、長崎）の司教館の中で、戦前の姿をほぼ完全に残している唯一の遺構であるという点です。その歴史的、そして建築史的な価値の高さと希少性から、2011年（平成23年）3月には県の文化財に指定されました。また、2007年（平成19年）には、ユネスコの世界遺産（文化遺産）暫定リストに掲載された「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の一部として、「大浦天主堂と関連施設」を構成する資産の一つにもなっています。

1998年4月からは、カトリック長崎大司教区が運営する「長崎コレジオ」として、司祭を目指す神学生の養成施設として利用されていましたが、2013年4月には福岡に移転し、名称も「福岡コレジオ」と変更されました。

建築概要としては、所有者はカトリック長崎大司教区であり、設計はマルク・マリー・ド・ロと鉄川与助、竣工は鉄川与助が担当しました。構造は煉瓦造で、一部に木骨煉瓦造と木造が用いられています。地上3階、地下1階の規模を持ち、屋根は北側が切妻、南側が和瓦の寄棟という特徴的な形状をしています。建物の間口は35.86メートル、奥行きは13.68メートル、建築面積は490平方メートルです。

所在地は、〒850-0031　長崎県長崎市南山手町5-3です。交通アクセスとしては、長崎電気軌道5号系統の「大浦天主堂」電停から徒歩5分、または長崎バスの「松ヶ枝国際ターミナル」バス停（2022年10月1日より「グラバー園入口」から名称変更）から徒歩5分です。周辺には、大浦天主堂、旧羅典神学校、南山手、グラバー園、祈りの丘絵本美術館などがあります。

旧長崎大司教館は、その歴史的背景、建築様式、そして文化的価値において、長崎における重要な遺産の一つです。カトリック教会の歴史と、日本の近代建築史を語る上で、非常に重要な存在と言えるでしょう。

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