明元皇后郭氏

郭皇后（かくこうごう）

郭皇后は、三国時代の魏の皇帝、曹叡（明帝）の二番目の皇后であり、諡号は明元皇后です。涼州西平郡の出身で、父は郭満、母は杜氏。河西地方の豪族の娘として生まれましたが、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯

元は河右の豪族の娘でしたが、西平郡で反乱が起こった際、連座して後宮に没収されるという不遇を経験します。しかし、曹叡が皇帝に即位すると、その美貌と聡明さで寵愛を受け、夫人の位にまで上り詰めました。

景初2年（239年）に曹叡が重病に倒れると、皇后に冊立されます。しかし、その数日後には曹叡が崩御。幼い曹芳（斉王）が後を継ぐと、皇太后として尊ばれ、永寧宮に住まうこととなりました。

曹芳の時代、朝廷では皇太后の意向を伺ってから政策を施行するという形式が取られました。しかし、実際には曹爽、のちに司馬懿とその息子たちが実権を握っており、皇太后自身には大きな権限はなかったと考えられています。正始10年（249年）の司馬懿によるクーデターの際には、皇太后の支持を取り付けることで、その正当性を主張しました。

その後も、毌丘倹や鍾会といった反乱者たちが、皇太后の命と称して挙兵するなど、その名が利用されることがありました。また、司馬師が曹芳を廃位する際にも、皇太后の令が理由として用いられました。

しかし、曹芳の廃位後、後継者を決定する場面で、皇太后は司馬師と対立します。司馬師が曹拠を推したのに対し、皇太后は曹髦を強く主張しました。その理由として、「彭城王（曹拠）では太廟における昭穆の並びにそぐわない」ことを挙げ、曹叡の血筋を引く曹髦こそが相応しいとしたのです。この背景には、司馬氏の専横を警戒し、才気煥発な曹髦を擁立することで牽制しようという思惑があったとも考えられます。

皇太后の主張は最終的に受け入れられ、曹髦（高貴郷侯）が皇帝として即位することとなりました。

諸葛誕が反乱を起こした際には、皇太后と曹髦が親征する形で、司馬昭に奉戴され鎮圧へと向かいました。しかし、曹髦は司馬昭の専権を排除しようと試み、逆に司馬昭の部下に殺害されるという悲劇に見舞われます（甘露の変）。司馬昭は皇太后の令と称し、「帝が皇太后を害そうとしたため殺害された」と偽りの理由を述べました。さらに、曹髦を庶民の格式で葬ろうとしましたが、司馬孚の反対により、皇太后に上奏して王の格式で葬る許可を取り付けました。

景元4年（264年）に崩御。翌景元5年（264年）2月、曹叡の陵墓である高平陵の西に埋葬されました。その生涯は、激動の時代を生き抜き、政治にも深く関与した皇后として、後世に語り継がれています。

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