明善寺合戦

明善寺合戦（1567年）の詳細解説：宇喜多氏の台頭と備前国制覇への転換点

明善寺合戦は、永禄10年（1567年）に備前国上道郡沢田村（現在の岡山県岡山市中区沢田付近）で繰り広げられた戦いです。この合戦は、龍口城に入場した石川久智率いる三村勢と、龍口城を包囲した宇喜多直家・松田元堅・伊賀久隆らの連合軍との間で激突しました。後の軍記物では、備中国を掌握し、備前国制覇を狙う三村勢が総崩れとなったことから「明善寺崩れ」とも呼ばれています。

合戦の背景

永禄2年（1559年）、宇喜多直家は主君である浦上宗景の命により、沼城城主・中山勝政を討ち、沼城を預かるようになりました。同時期、三村家親は同盟相手であった毛利元就と共に対尼子戦に参加していました。尼子氏の勢力が衰退し、月山富田城を残すのみとなった頃、三村家親は毛利元就に暇乞いをし、備前国金川（現在の岡山市北区御津金川）を攻略して備前攻略の足がかりを築こうとしました。

開戦前の地域情勢

毛利元就の許可を得た三村家親は、備前国に侵攻し、岡山城と舟山城を攻め、金光宗高と須々木行連を降伏させ、両城を支配下に置きました。永禄8年（1565年）には美作国に侵攻し、宇喜多直家の娘婿である後藤勝元の守る三星城を攻めましたが、宇喜多直家の加勢により落城させることはできず撤兵しました。

三村家親の暗殺

永禄9年（1566年）2月、三村家親は再び美作国に侵攻しましたが、宇喜多直家の命を受けた遠藤又次郎、喜三郎の手により鉄砲で狙撃され命を落としました。これにより三村軍は備中国への撤退を余儀なくされ、当主を失った三村家では元親が家督を継ぎました。

明善寺合戦の勃発

前哨戦

永禄9年（1566年）、宇喜多直家は備前国での支配領域拡大を図るため、備前国上道郡沢田村（現在の岡山市中区沢田）にある明善寺山に城を築き、軍勢を駐屯させました。永禄10年（1567年）7月、三村氏が明善寺城へ夜襲をかけ、不意打ちを受けた宇喜多軍は守備兵を多数失い、城から撤退しました。これにより明善寺城は三村氏の手に落ち、元親は根矢与七郎と薬師寺弥七郎に守兵150人を預けて守備させました。

明善寺城落城の報を受けた直家は、先の合戦で三村氏に降伏した岡山城主・金光宗高、中島城主・中島元行、舟山城主・須々木豊前守を寝返らせることに成功し、明善寺城の三村軍は敵中に孤立することとなりました。直家は降伏勧告の使者を明善寺城に送りますが、根矢、薬師寺らは各城主の寝返りを信じず、降伏勧告を拒否し、備中本国に救援要請の使者を送りました。

城方の動きを察知した直家は、明善寺城を早期攻略し、救援に来る三村軍本隊を自領内に引き込み殲滅する作戦を立案。金光宗高に三村軍が後詰めにくるよう誘い出させるよう指示を出し、金光はこの指示を受け、石川久智に明善寺城と連携して宇喜多軍を挟撃する作戦を提案しました。三村元親は、明善寺城からの報告も同様の内容であったため、出陣を決意します。

開戦

三村元親率いる軍勢は、石川久智、植木秀長、庄元祐らの軍勢を加え、10,000余人を集結させて備前国に侵攻。対する宇喜多直家は本拠の沼城を出発し、5,000余人の軍勢を5段構えに配置し、先鋒隊を明善寺城に侵攻させました。三村勢は辛川表（現在の岡山市北区辛川）で備前衆の諸軍をも集結させて軍議を行い、先陣を庄元祐の7,000余人とし、金光宗高を案内人として南へ進行し、岡山城の南を大きく迂回して旭川を渡河し、明善寺城へ進出。中軍には石川久智の5,000余人とし、原尾島村（現在の岡山市中区原尾島）に進出し、明善寺城を攻める宇喜多勢の背後を襲う。総大将の元親は、中島大炊を案内人として8,000余人を率い、釣の渡し（現在の岡山市北区三野）から旭川を渡河し、四御神村（現在の岡山市中区四御神）を経由して、沼城を急襲する作戦でした。

しかし、三村勢の動きを聞いた直家は、直ちに城を攻め落とすよう下知を発し、明善寺城に大攻勢をかけ、瞬く間に落城させてしまいました。

三村軍の敗走

明善寺城の兵と挟撃するつもりでいた三村勢でしたが、直家の速攻により作戦は頓挫。庄元祐率いる先鋒隊は宇喜多勢の先鋒隊の奇襲を受け大混乱に陥り、庄元祐自身も討ち取られました。中軍を指揮していた石川久智も明善寺城落城と先鋒隊の敗走を知り、作戦を変更せざるを得なくなり防戦しましたが、宇喜多勢本隊の攻撃に耐えきれず敗走しました。

三村元親本隊も、明善寺城からの火の手を見て落胆し、先鋒・中軍の敗走の報に接し、総崩れとなりました。三村元親は宇喜多直家との一戦を望みましたが、家臣に諌められ撤退しました。

合戦の影響

この合戦で宇喜多氏は最大の対抗勢力であった三村氏を備前国西域から撃退し、福岡（現在の岡山県瀬戸内市長船町福岡）の地を握ったことにより、浦上家中における発言力と独立性を確保しました。この後、宇喜多氏は浦上氏の被官の身でありながら戦国大名としての地位を備前に確立していくこととなります。

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