春日町 (鹿児島市)

鹿児島市春日町：歴史と文化が息づく町

鹿児島市春日町は、市の中心部に位置する、歴史と文化が豊かな町です。旧薩摩藩の城下町としての面影を残しつつ、近代的な都市としての顔も併せ持っています。ここでは、春日町の地理、歴史、文化、そして人々の暮らしについて詳しく見ていきましょう。

地理

春日町は、鹿児島市の中央部に位置し、稲荷川の下流域に広がっています。町域の北には池之上町、東には清水町、南には浜町と柳町、西には大竜町が隣接しています。町の南端を東西に走る国道10号が、交通の要となっています。町の中央部には、初代文部大臣を務めた森有礼の生誕地があり、その功績を称える石碑が建立されています。

歴史

春日町の歴史は古く、縄文時代にまで遡ります。町内にある「春日町遺跡」からは、縄文時代前期のものとされる土器が発掘され、「春日式土器」と名付けられました。この土器は、瀬戸内地方の船元式土器と類似した形状を持つことが特徴で、当時の文化交流を物語っています。

春日町の名前の由来となった春日神社は、安和2年（969年）に大和国春日郷（現在の奈良県奈良市春日野町）の春日大社から分祀されたと伝えられています。この神社は、鹿児島五社（上町五社）の一つとして、古くから地域の人々の信仰を集めてきました。江戸時代には、春日神社の周辺に御船手や船魂神社が置かれていました。また、当時この地域は鹿児島近在坂元村の一部であり、「天保城下絵図」によると、春日小路には武家屋敷が立ち並んでいたことがわかります。

明治時代に入り、春日小路町は鹿児島城下の一部として正式に設置されました。初期には、士族が多く住む武家町でしたが、市制施行に伴い、1889年（明治22年）に鹿児島市の一部となり、1899年（明治32年）に「春日町」と改称されました。1967年（昭和42年）には住居表示が実施され、町域の再編が行われました。

文化

春日町には、歴史的な建造物や文化財が点在しています。その一つが、登録有形文化財である鹿児島県民教育文化研究所です。この建物は、地域の文化活動の拠点として、長年にわたり活用されてきました。また、町内には春日神社をはじめとする神社仏閣が点在し、地域の人々の信仰の中心となっています。

春日町は、初代文部大臣である森有礼の生誕地としても知られています。彼は、近代日本の学校制度を確立し、日本の教育の発展に大きく貢献しました。しかし、1889年（明治22年）に国粋主義者によって暗殺されるという悲劇に見舞われました。

交通

春日町内には、かつて鹿児島市電上町線が走っており、春日町電停が設置されていました。しかし、1985年（昭和60年）に上町線が全線廃止されたため、現在はバスなどの公共交通機関が利用されています。

現在の春日町

現在の春日町は、静かな住宅街でありながら、歴史と文化の香りが残る地域です。町内には、鹿児島県警察鹿児島中央警察署春日交番、共立幼稚園、鹿児島春日郵便局などの公共施設があり、地域住民の生活を支えています。市立小・中学校の学区も定められており、地域の子どもたちが教育を受けています。

春日町は、その歴史と文化を大切にしながら、現代の生活に合ったまちづくりを進めています。この町を訪れることで、鹿児島の歴史と文化に触れ、新たな発見があることでしょう。

参考文献

鹿児島市史編さん委員会『鹿児島市史Ⅰ』 1巻、鹿児島市、1969年2月28日。
鹿児島市史編さん委員会『鹿児島市史Ⅱ』 2巻、鹿児島市、1970年3月25日。
南日本新聞『鹿児島市史Ⅴ』 5巻、鹿児島市、2015年3月27日。
有田忠雄、河口貞徳、村田凞、稲葉行雄、村野守治、四本健光、紀野健一郎『鹿児島のおいたち』鹿児島市、1955年。
木脇栄『かごしま市史こばなし』南日本新聞開発センター、1976年。
「角川日本地名大辞典」編纂委員会「角川日本地名大辞典 ４６ 鹿児島県」『角川日本地名大辞典』第46巻、角川書店、日本、1983年3月1日。
芳即正、五味克夫『日本歴史地名大系47巻 鹿児島県の地名』平凡社、1998年。
“鹿児島市内の指定文化財等一覧表”. 鹿児島市 (2020年4月1日). 2020年11月8日閲覧。
* 橋口兼古、五代秀堯、橋口兼柄 著、島津久光 編『三[[国名勝図会]]』薩摩藩、1843年。

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