昭宗 (唐)

唐の昭宗：激動の時代を生きた皇帝

唐の第22代皇帝、昭宗は、懿宗の七男であり、僖宗の弟として誕生しました。888年、兄である僖宗の崩御後、当時朝廷の実権を握っていた宦官・楊復恭によって皇帝に擁立されます。しかし、昭宗の治世は、まさに激動の時代でした。

即位当時、地方の軍事勢力である藩鎮は、農民反乱の鎮圧に乗じて勢力を拡大しており、朝廷の支配は弱体化していました。昭宗は、軍事力の強化による朝廷権力の回復を目指しましたが、その試みは藩鎮の猜疑心を招き、結果として鳳翔節度使李茂貞の反乱を引き起こすことになります。

光化3年（900年）、宦官によるクーデターにより昭宗は一度は退位を余儀なくされます。しかし、翌天復元年（901年）には別の宦官勢力の蜂起により、再び皇帝の座に返り咲きます。しかし、安寧の日々は長くは続きませんでした。

反乱軍が長安に迫ると、宦官の韓全誨は鳳翔への逃亡を提案。天復3年（903年）、李茂貞は韓全誨ら殺害し、官軍の朱全忠と和議が成立、昭宗は長安へ帰還します。しかし、この帰還は束の間の安らぎに過ぎませんでした。

李茂貞が朱全忠によって失脚すると、朱全忠は最大勢力の藩鎮となり、皇帝への野心を露わにします。その野望達成のため、朱全忠は内廷の宦官5千人余りを殺害、地方の監軍も粛清しました。そして、天祐元年（904年）、大臣らの反対を押し切り洛陽への遷都を強行します。この強引な行動は、李克用、李茂貞、王建ら有力者からの反旗を招くことになります。

天祐元年（904年）8月11日夜、昭宗は朱全忠が派遣した兵士によって暗殺されました。宮中を逃げ回る末に命を落とすという悲劇的な最期でした。享年38歳でした。

昭宗の死後、朱全忠は昭宗の九男である輝王李祚を哀帝として擁立します。これは、朱全忠による唐への支配確立に向けた布石であったと言えるでしょう。

昭宗の治世において特筆すべき出来事として、渤海国に関する認識があります。897年、渤海が新羅より上位の席次を唐に要請した際に、唐がこれを拒否したことに対し、新羅の崔致遠が撰述した『謝不許北国居上表』は貴重な史料です。この国書には、渤海建国の祖である大祚栄が高句麗領内に居住していた粟末靺鞨人であったこと、渤海が高句麗領内に居住していた粟末靺鞨人によって建国されたことが記されています。同時代の史料であり、新羅王から唐皇帝への公式な国書であることから、その史料的価値は極めて高いとされています。

昭宗の家族構成としては、正室である何皇后（積善太后）を始め、多くの皇子皇女がいました。しかし、朱全忠の台頭により、多くの皇族は運命を翻弄されることになります。昭宗の生涯は、宦官の専横、藩鎮の反乱、そして朱全忠による権力掌握という、唐王朝滅亡への道を象徴するような激動の時代を物語っています。彼の悲劇的な最期は、唐の衰亡を象徴する出来事として、歴史に刻まれました。

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