昭王 (燕)

昭王 (燕)

昭王（しょうおう、生年不詳 - 紀元前279年、在位 紀元前312年 - 紀元前279年）は、中国の戦国時代の燕の王です。父は燕王噲（かい）、昭王はその庶子にあたります。昭王は、楽毅（がくき）や郭隗（かくかい）といった有能な人材を積極的に登用し、かつて斉（せい）によって滅亡の危機に瀕した燕（えん）を再興させ、燕の全盛期を築き上げました。

生涯

公子職（こうししょく）時代

昭王は、公子職（こうししょく）という名で、燕王噲の庶子として生まれました。

史記によると、父の燕王噲は国政に関心がなく、宰相の子之（しし）を盲信し、堯舜（ぎょうしゅん）にならって子之に禅譲しました。これに対し、太子の平（へい）は反対勢力を集めて挙兵し、燕の国内は騒乱状態に陥りました（紀元前315年）。

翌年、斉（田斉）の湣王（びんおう）が、公子職の援軍という名目で軍を侵攻させ、燕の全土を併合しました。父の燕王噲は殺され、燕は一時的に滅亡状態となりました。

燕の再興

紀元前312年、昭王は、斉に服属することを条件に王位に即くことを許されました。昭王は、燕の再興と斉への復讐を胸に誓い、富国強兵と人材登用を積極的に進めました。

昭王はまず、郭隗を師と仰ぎました。これが有名な故事「まず隗より始めよ」の由来です。昭王は郭隗を厚遇することで、優秀な人材を呼び込もうとしました。その言葉通り、名将の楽毅や蘇秦（そしん）の弟である蘇代（そだい）など、多くの有能な人材が燕に集まりました。

復讐

当時、斉の湣王は、周辺諸国との間で度重なる戦争を行っていました。斉は強国となりましたが、その一方で、多くの国々から恨みを買っていました。昭王は楽毅の進言を受け入れ、燕、韓（かん）、魏（ぎ）、趙（ちょう）、秦（しん）の5ヶ国による連合軍を結成し、紀元前284年に斉へ攻め込みました。

5ヶ国連合軍は、済西（さいせい）の戦いで斉軍を破りました。その後、4ヶ国の軍は撤退しましたが、燕軍は楽毅を総司令官として斉の都である臨淄（りんし）へ進軍し、ついに臨淄を陥落させました。昭王はこれを大いに喜び、自ら臨淄まで赴いて楽毅を労い、昌国君（しょうこくくん）に任命しました。これは、功臣に領土を直接与えるという破格の褒賞でした。さらに、昭王は楽毅に軍の指揮を任せ、斉の平定に当たらせました。

湣王は臨淄を落とされると、莒（きょ）へ逃げ込みました。楽毅は、斉の70余りの城を5年ほどで攻略し、斉に残るは湣王のいる莒と、田単（でんたん）のいる即墨（そくぼく）のみとなりました。楽毅は莒を攻めましたが、湣王も徹底抗戦したため、戦いは長期化しました。そのため、楽毅は楚（そ）の援将である淖歯（じょうし）を調略しました。湣王は淖歯の裏切りによって殺害され、昭王はついに復讐を果たしました。

最期とその後

田単のいる即墨と、湣王の死後に即位した襄王（じょうおう）（淖歯は裏切りに怒った市民によって殺害されました）のいる莒だけが、燕に対してなおも抗戦を続けました。戦いが長期化する中で、紀元前279年に昭王は病死し、太子の恵王（けいおう）が即位しました。

恵王は、太子時代から楽毅と仲が悪く、昭王の死に乗じて、田単による離間策（りかんさく）に乗り、楽毅を召還して誅殺しようとしました。しかし、楽毅は趙へ亡命しました。恵王は、騎劫（ききょう）という将軍を新たな司令官として派遣しましたが、恵王の不当な人事に燕軍の士気は低下し、昭王の時代に奪った斉の70余りの城はすべて奪い返されました。

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