昼神車塚古墳

昼神車塚古墳：高槻の歴史を語る前方後円墳

大阪府高槻市天神町・古曽部町に位置する昼神車塚古墳は、前方後円墳として知られています。史跡指定こそ受けていませんが、その歴史的価値は高く、地元住民や歴史研究者から注目を集めています。

古墳の名称と立地

「昼神」という名称は地名に由来し、「車塚」は菅原道真の伝説にまつわるものとされています。天神山丘陵の南端に築造されており、この丘陵一帯は弥生時代の集落跡や複数の古墳の存在が確認されており、古代から人々が生活していた重要な地域であったことを示しています。後世には、上宮天満宮が創建され、昼神車塚古墳は古くから同天満宮の社地として扱われてきました。

古墳の構造と特徴

前方後円墳である昼神車塚古墳は、前方部を北に向けて築造されています。墳丘は3段構造（東側は4段に見える）をしており、前方部が後円部よりも高く、後世に改修された可能性を示唆しています。慶長伏見地震による地滑りの痕跡も確認されており、地震による影響を受けていたことがわかります。

墳丘からは葺石や埴輪の破片（円筒埴輪や形象埴輪）が出土しており、古墳の築造当時の様子を知る上で貴重な資料となっています。特に注目すべきは、前方部中段で発見された2列の埴輪列です。その中には、猪1頭を犬2頭が追いかける様子を表した形象埴輪が含まれており、当時の生活や信仰を垣間見ることができる、極めて貴重な資料です。また、出土した円筒埴輪の中には、高槻市郡家新町にある今城塚古墳出土品と類似するものが存在し、両古墳間の関連性を示唆しています。

埋葬施設については、後円部に横穴式石室が存在すると推測されていますが、現状では未調査のため詳細は不明です。

築造時期と被葬者

昼神車塚古墳は、古墳時代後期の6世紀中葉頃（あるいは6世紀前半頃）に築造されたと推定されています。三島地域における最後の築造例であり、同時期に造られた大王墓である今城塚古墳との比較研究において、重要な位置を占めています。

被葬者については特定されていませんが、『日本書紀』の記述から、安閑天皇元年（532年）に見える三嶋飯粒（三島県主飯粒）を被葬者とする説があります。また、上宮天満宮境内にある野身神社は、野見宿禰（土師氏祖）に由来すると考えられており、この神社と昼神車塚古墳の存在から、土師氏（古墳築造集団）が当地に集住していた可能性も示唆されています。興味深いことに、古墳の下層からは弥生時代中期の方形周溝墓が発見されており、この地が弥生時代から墓域として利用されていたことがわかっています。

遺跡の歴史と調査

江戸時代後期の『摂津名所図会』にも昼神車塚古墳は描かれており、古くから知られていた古墳であることがわかります。1960年代後半から1970年代にかけて、府道建設に伴う発掘調査が行われ、その結果、前方部は削平されましたが、その後復元整備が行われました。発掘調査では、数多くの貴重な出土品が発見され、古墳の構造や築造時期、被葬者に関する研究が進みました。

現地情報

所在地：大阪府高槻市天神町1丁目・古曽部町1丁目
交通アクセス：JR京都線高槻駅から徒歩約8分
* 関連施設：高槻市立今城塚古代歴史館（出土品などを展示）

昼神車塚古墳は、歴史とロマンに満ちた場所であり、高槻市の歴史を語る上で重要な遺跡です。 今城塚古墳と共に、古代日本の歴史を知る上で重要な手がかりを与えてくれる存在と言えるでしょう。

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