曲淵景漸

曲淵 景漸の生涯と功績

はじめに

曲淵景漸（まがりぶち かげつぐ）は江戸時代の著名な旗本および奉行であり、享保10年（1725年）に生まれ、寛政12年（1800年）に76歳で亡くなりました。父は曲淵景衡で、兄の景福や子の景露も名を馳せました。また、彼は武田信玄に仕えた名将、曲淵吉景の直系の子孫でもあります。景漞は特に江戸市中においてその手腕が評価され、記憶に残る奉行の一人です。

初期のキャリアと奉行職への道

景漸は寛保3年（1743年）に兄の死後、家督を継ぎました。その後、寛延元年（1748年）には小姓組番士として出仕し、その後小十人頭、目付などの役職を経験しました。明和2年（1765年）、41歳で大坂西町奉行に任命され、更には甲斐守に叙任されました。明和6年（1769年）には江戸北町奉行に就任し、約18年間にわたり江戸を統治しました。彼の在職中には、田沼意知刃傷事件が発生し、景漞はその裁定に関与。特に事件に対する迅速な処理と、関与した若年寄や目付に対しての出仕停止処分は、その判断力を示しています。

経済政策と市民人気

景漞は経済に対しても非常に精通しており、江戸までの米の配送において顕著な功績を残しました。当時、彼は庶民からの人気も高く、根岸鎮衛と並ぶ名奉行として知られていました。特に明和8年（1771年）3月4日に行われた刑死人の腑分けに際して、江戸の医師達にその事前通知を行ったことで、医学の発展に寄与しました。この出来事は日本の医学史において重要な影響を著しました。

天明の打ちこわし

しかし、景漞は天明6年（1786年）からの大飢饉である天明の打ちこわしに直面します。米の高騰により大量の市民が困窮し、様々な対策を講じるも状況は悪化。商人の癒着や不足物資の影響が大きく、彼の発言が町人の怒りを招く要因となりました。「米がないなら犬を食え」といった言葉が伝わり、最終的に江戸市中では暴動が勃発し、市は無秩序状態に陥ります。

鎮圧とその後の処分

騒動の拡大を受け、江戸城では早急に対応が必要とされましたが、町奉行の姿勢は消極的でした。北町奉行として現場に出向かない姿勢が批判されましたが、結局は現場に出向いて鎮圧に尽力することになりました。その後、景漞は町奉行職を罷免され、石河政武が後任の町奉行となると、彼は西ノ丸留守居に降格されました。

復権と晩年

一度は失脚した景漞でしたが、その能力は高く評価され、松平定信の下で勘定奉行に再任されました。その後も多くの業務をこなしましたが、寛政8年（1796年）には辞任を望み、翌年に病気で亡くなるまでの生涯を全うしました。

結論

曲淵景漞の人生は、困難な時代にあっても市民に寄り添った奉行としての努力が見受けられ、彼の残した痕跡は今もなお多くの人々に語り継がれています。江戸時代の背景を理解するためには、彼のような人物がいかに重要であったかを再評価することが大切です。

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