曲谷守平

人物と来歴

曲谷 守平（まがたに もりへい）は、日本の映画監督、脚本家として活動した人物である。1923年（大正12年）5月23日、東京府荏原郡大井町（現在の東京都品川区大井）に生まれた。

慶應義塾大学経済学部を卒業後、第二次世界大戦後の混乱期にあたる1947年（昭和22年）3月、東宝争議の最中に東宝の第三組合（後の新東宝の前身）でアルバイトとして関わった縁から、新東宝映画製作所（のちの新東宝）の演出部へ入社する運びとなった。

入社後は助監督としてキャリアをスタートさせ、特に喜劇映画の巨匠として知られる斎藤寅次郎に師事し、その薫陶を受けた。斎藤監督のもと、太泉映画（現在の東映東京撮影所）の演出部へ出向して経験を積んだ時期もある。また、斎藤のほかにも、阿部豊、中川信夫、並木鏡太郎といった当時活躍していたベテラン監督たちからも指導を受け、助監督としての実力を高め、チーフ助監督へと昇進を果たした。この助監督時代に培われた多様なジャンルへの理解と技術が、後の監督活動の基盤となったと考えられる。

監督として

1956年（昭和31年）、曲谷は監督に昇進し、同年公開の『美男をめぐる十人の女』で監督デビューを飾った。当時の新東宝は、大蔵貢社長のもとで、独特のB級と称される娯楽作品路線を強力に推進しており、曲谷もその中で多数の作品を手がけることになる。新東宝本体での製作に加え、大蔵社長が経営する別会社である富士映画名義の作品4本を含め、新東宝が倒産するまでに合計20本の映画を監督した。彼の監督作品は、コメディ、青春もの、怪談、アクションなど多岐にわたり、新東宝の多様な娯楽ニーズに応えるものであった。

1959年（昭和34年）12月には、『キネマ旬報』誌に掲載された「各社新鋭監督座談会」に、新東宝の若手監督の一人として参加。石井輝男、小野田嘉幹、土居通芳、三輪彰といった同時代の監督たちとともに、新東宝の将来や自身の映画製作への決意を語っている。この時期の代表作としては、『白蝋城の妖鬼』、『海女の化物屋敷』、『九十九本目の生娘』などが挙げられる。

新東宝倒産後

新東宝は1961年（昭和36年）8月31日をもって倒産を迎える。曲谷が監督した『北上川悲歌』は、この新東宝が製作・公開した最後の作品の一つとなった。新東宝消滅後、曲谷は活動の場を映画界からテレビ映画の世界へと移していく。

1962年（昭和37年）には、日活が製作・配給した井田探監督の映画『惚れたって駄目よ』で脚本に参加した後、本格的にテレビ映画の演出を手がけるようになった。日本電波映画、新東宝の後身の一つである国際放映、そして宝塚映画（現在の宝塚映像）など、様々な製作会社で多くのテレビドラマシリーズや単発ドラマの監督を務めた。主なテレビ作品には、『宇宙Gメン』、『君の名は』、『プロファイター』、『マキちゃん日記』、『右門捕物帖』などがあり、ここでも多ジャンルの演出を手がけ、その手腕を発揮した。

その後の消息と再評価

曲谷守平は、1975年（昭和50年）頃にテレビ映画の演出活動の第一線から退き、その後は不動産業に転じたと伝えられている。日本映画監督協会には1958年（昭和33年）4月に入会した記録が残されているが、現在の同協会のウェブサイトに会員としての記録は見当たらない。また、1988年（昭和63年）に発行された『映画年鑑』の住所録にはその名前が確認できるものの、それ以降の詳しい消息については不明となっている。

長らくその動向が途絶えていた曲谷守平だが、監督作品は時を経て再び注目を集めることがある。2010年（平成22年）、イタリアのウーディネで開催された第12回ウーディネ極東映画祭では、「新東宝回顧」と題した特集上映が行われ、そこで上映された15本の中に、曲谷が監督した『海女の化物屋敷』と『九十九本目の生娘』の2本が選ばれ、国際的な場で改めて紹介される運びとなった。

私生活では、宝塚歌劇団の元男役スターである星空ひかるが夫人であったことが知られている。

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