曽紀沢

曽紀沢（そう きたく、Zēng Jìzé、1839年12月7日 - 1890年4月12日）は、清朝末期の外交官であり、名将として知られる曽国藩の長男として生まれました。字は劼剛（こうごう）、号は夢瞻（ぼうせん）と称しました。湖南省湘郷県（現在の双峰県荷葉鎮）の出身です。弟に曽紀鴻、子に曽広鈞がいます。

曽紀沢は、父・曽国藩の功績により1870年に戸部員外郎に任官し、官界でのキャリアをスタートさせました。1877年には、父の爵位を継承し、一等毅勇侯の地位を得ました。1878年には、駐英公使兼駐仏公使に任命され、太常寺卿にも補任されました。当時の清朝は、新疆でヤクブ・ベクが反乱を起こし、混乱に乗じてロシアがイリ地方を占領するという深刻な状況に直面していました。清朝は、崇厚を派遣してロシアとの交渉を行わせましたが、崇厚はイリ地方をすべて割譲し、賠償金を支払うという清朝にとって不利なリヴァディア条約を結んでしまいました。この条約は清朝に受け入れられず、曽紀沢が駐露公使を兼任し、改めてロシアとの交渉にあたる事になりました。

曽紀沢は、粘り強い交渉の結果、1881年にイリ条約を締結し、イリ地方の一部返還に成功しました。この功績により、曽紀沢は国内外から高い評価を得ることになりました。その後、彼はイギリスとのアヘン貿易問題や、朝鮮、ミャンマーなどの問題に関する交渉にも従事しました。1884年の清仏戦争においては、フランスに対して強硬な姿勢を貫いたため、和平論が主流であった朝廷によって駐仏公使を解任されました。1885年には、駐英公使も免ぜられて帰国することとなりました。

帰国する直前、曽紀沢は清朝の内政外交と列強の対清政策を論じた『China, the Sleep and the Awakening』（『中国先睡後醒論』）を発表しました。帰国後は、戸部右侍郎、総理各国事務衙門大臣などの要職を歴任し、外交政策の改革や不平等条約の改正に尽力しました。曽紀沢の死後、その功績を称え、恵敏の諡号が贈られました。また、同年には叔父である曽国荃も亡くなっています。

曽紀沢は、激動の時代にあって、清朝の外交官として、その手腕をいかんなく発揮しました。不平等条約の改正や、国家の独立を守るために、精力的に活動した人物として、後世に名を残しています。

著作
『曽恵敏公遺集』
『曽恵敏公全集』
『曽恵敏公使西日記』
『曽恵敏公手写日記』
『出使英法俄日記』
『曽紀沢日記』

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